ヘインズ・ブランズ(HBI)の投資判断(3) お洒落でない下着ブランドに面白さがある



今回はヘインズ・ブランズの決算報告書を詳しく見ていきます。



2016年の年次報告書の各セグメント毎の売上と営業利益です。


ヘインズでは部門を下のように分けています。


(1)下着や靴下などのInnerwear部門
(2)チャンピオン製品などのActivewear部門
(3)直営店やカタログ販売などのレガシー分野を扱うDirect to Consumer部門(2017年からこれらはOther部門に区分されるようになりました)
(4)海外販売のInternational部門
(5)買収にかかる法人費用を含むCorporate部門


2016年は、前年比でInnerwear部門とDirect to Consumer部門が軟調ですね。


売上の46%を占めるInnerwear部門が低調だったため、上記の決算後に市場の懸念による大きな売りを招きました。しかし、この前後くらいからいわゆるアマゾンショック、小売業全体で店舗縮小による在庫過剰が生じていたのは記憶に新しいところです。同社も多分に漏れずその影響を受けていると思われます。


そして、セクター全体への逆風が吹く中、ヘインズはそのシェアを落としていません。


また、2016年の全体の営業利益は一見すると前年度からは横ばいですが、実質的な一時的経費のCorporate (買収にかかる法人費)を除いて計算すると、前年比11%増になっているのです。



さて、2017年 Q1+Q2 (six months ended) を見ていきます。


逆風は続き、営業利益でいうと前年比Innerwear -7.2%, Activewear -4.7%と主力2分野の減益、またOther -66.6%とレガシー分野は消えてなくなるのではないかと思わせるほどの減益となっています。


それに反してInternationalは + 127.3%と驚異的な伸びで、ヘインズ第2の収益の柱に育っています。


同じくCorporate (買収にかかる法人費)を除いて実質の営業利益を見ます。全体の営業利益は前年比5.4%増です。


つまり、2016年・2017年ともにEコマースの逆風が吹いていますが、買収にかかる一過性の経費を除外して見てみると、営業増益を確保していることが分かります。


またOther部門 (自社販売店やカタログ販売)の減収は著しいですが、もともと売上高は全体の3%と大勢に影響はありません。寧ろEコマースが台頭しても、自社製品をそちらで売れば良いだけですから心強いとも言えます。



結論です。


同社は、(1)米国の市況により主力分野での一過性の業績低迷を来しているもののシェア低下などブランド価値の毀損を来したわけではないこと、(2)買収と海外展開により市況が悪い中でなお営業増益を続けていること、(3)多くの小売店と異なり自社店舗の存在が小さくEコマースの影響は小さいと考えられること、そして(4)十分に安いことより投資対象と考えます。


また理解可能な分野にのみ投資するのが私のスタンスですが、流行り廃りが早くお洒落なファッション業界と比べ、100年以上昔から続く下着ブランドの同社は、「着心地が良く着慣れたものなら下着など外見はどうでもよい」と考える中年の私にとってはよほど理解可能な分野です(笑)。


それはともかく、このようなオールドセクターの商品には、私のような中高年層にとって着慣れた消耗品を買い替え続けるという点で、心理的なスイッチングコストを有する利点もあるだろうと思います。


同社の問題としては、多くの買収により負債総額が56.8億ドルと総資産69.1億ドルに対して多い点があります。そのため、今後の利上げによる利払い上昇と利益減に注意を要します。


但し同社の純利益は年5.4億ドルと10年程度でその気になれば負債を返済出来る程度ではありますし、同社はリーマンショック時も赤字を出していません。


しかし、他にも問題となりうる点としては、ネット販売の新興企業にシェアを奪われるなどの可能性はある点、またアパレル自体が景気循環には脆弱なビジネスモデルである点もあり、同銘柄に投資する場合は、ある程度の分散投資は必要と思います。




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