アーリーリタイアを考える人が知るべきこと(1) インフレ、貯蓄資産を焼き尽くす炎






アーリーリタイアが世間では話題です。


早いうちから貯蓄を行い、40代-50代の早期で退職して、その後は慎ましい暮らしを続けるという生活スタイルです。


私も普段、医師として仕事をしていると、時には治療がうまく行かないこともあります。医療の場合は、対象の病気というものが患者本人の体力、そして治る段階で受診して頂くかどうかが大きな治療の要因となりますので、治療がどうしても上手くいかないケースは多々あります。


しかし、怒った患者さんから、「治らなかったのはあなたの治療のせいだ!訴えてやる。」と診察室のドアを叩きつけるように閉め、出ていかれたりすることもあります。


そんなときは、少しげんなりしてしまいますね。


私の場合は、今の医療という仕事が性にあっているといいますか、あまり気にせず仕事を続けていますが、クライアントの意識が高まっている現代という時代は実にストレス社会だなと思います。


実際、私も医療訴訟に対しては個人で2億円の保険、病院でも1億5000万円の保険に加入して二重にリスクをヘッジしているのです。


全ての方が一様に会社勤めをして、定年まで勤めあげるスタイルを守り続ける必要はないと思いますし、一度しかない人生ですから、何か自分の行いたいことにチャレンジするのも手だとは思います。


アーリーリタイアの問題(1)  給与収入減とその固定


さて、アーリーリタイアを実際に考えた場合に、最も身に迫った問題となるのは定期的な収入源が断たれること、そして日本の社会では一度正社員などの待遇を捨てると同じ収入での再就職は極めて困難なことが挙げられるでしょう。


そのため、勤務している間の「生涯の必要生活費」の見積もりと、形成した資産が、その後数十年の人生を規定するものになると言えます


そして、給与所得というものは、後述する日本円のインフレによる価値毀損に対しても、実質的なリスクヘッジの役割を持つと考えますので、ここが無くなるのは大きな問題です。


アーリーリタイアの問題(2)  インフレへの脆弱性


さらにリタイア後に、貯蓄や円建て資産に資産が集中している場合に問題となるのが、日本円のインフレ進行です。


3000万円の貯蓄があったとしても例えば年2%のインフレでは実質的な価値は1年後2940万 → 2年後2881万 → 3年後2824万 → … →10年後 2451万と指数関数的に減少します。年4%であれば、10年後は3000万 → 1994万となる計算です


日本は長い間、デフレの期間が続いたため、1970年代までのインフレの時代の記憶は薄れつつありますが、例えば同時期の物価は「狂乱の物価」と呼ばれ、年6-24%の恐るべきインフレ率で資産を侵食したのです。


日本がこの120年間で、実は3000倍のインフレーションを経験したという事実は忘れてはならないと思います


アーリーリタイアした場合は、その後のフリー期間は平均寿命から考えると30代であれば55年間程度、40代であれば45年間程度でしょうから(女性ではもう少し長いと思います)、インフレへの確実な備えが不可避です


まずはここを明確にしておくべきと考えます。


問題点を踏まえて


アーリーリタイアに関する本・サイトでは、こうすれば上手くいく見込みが高い!というようなアーリーリタイア攻略法(?)は見当たらず、(1)出来るだけ生活費をカットすること、(2)より多くの貯蓄を確保することが推奨されているようです。


ですが、こういった対策のみを手掛かりに、自己の給与所得というインフレへの対策法を手放して、その後の人生を決断するのは余りに危険と私は思います。


しかしながら、せっかく一度しかない人生ですので、出来るだけ望むものを手に入れられるアーリーリタイアへの考察、そして強く注意すべき点への考察をこのシリーズでは行っていこうと思います。




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