バフェット・ニュース(2) 税制改革が呼ぶ嵐






10月4日付 Bloombergのインタビューでウォーレン・バフェットは議会の税制改革論議を注視しているとした上で、下記のように述べました。


税制改革の結果によって、その結果がいずれであっても売り買いのいずれの側で行動をとることになる。大いに利益が乗っている銘柄がある一方で、含み損が出ている銘柄もいくつかある。10月という時期から考えると、1月に税制が変わりキャピタルゲイン課税が上昇するのであれば、今年は損害確定を優先させ、来年以降に利益確定を伸ばした方が得をするだろう。


今回はこのコメントを考えます。


トランプ減税とは


まずは今回、トランプ政権が年内成立を目指している税制改革の概略をお示しします。


・キャピタルゲイン課税:現行の23.8% → 20%へ
・法人税:現行の35% → 20%へ
・個人の税制(連邦税):現行の最高税率39.6% →35%へ
・遺産税:現行549万ドルを超える遺産から40%課税 → 撤廃へ
・代替ミニマム税(個人への税控除制限)の撤廃 
・その他にもパススルー減税、個人・家族・子供への税控除の拡大など


現状では詳細が未定の部分も多いですが、特に富裕層への減税が主になっていることから、その内容が議論を呼んでいます。


そして、法人税の減税が大きな企業収益増につながること、また個人への減税が米国経済の最大のエンジンである個人消費に火をつける可能性があることから、最近の市場では連日の高値相場となっています。


我々、投資家からすると直接投資へ影響を及ぼすのは、特にキャピタルゲイン課税でしょう。


キャピタルゲイン減税の隠れた意味


キャピタルゲイン課税が減税された場合に、市場では何が起こるのでしょうか。


恐らく、バフェットと同じく、利益確定を行いたい人は来年以降に延期するでしょう。特にその傾向は運用額の大きい、機関投資家に顕著になるだろうと思います。


逆に損失確定を行う時期は、いつ損益通算を行っても別に違いはありませんので、今までの投資の利益による納税額の多寡に応じ、売却時期は調節することとなるでしょうね。


そのためキャピタルゲイン減税の成立後は、売り手が減少し、買い手ばかりが存在する状況が生じること、つまり強い上げ相場になることが予想されます。


また個人への課税や法人税などの減税も成立した場合、その減税幅によっては、現在の低金利と併せて、バブル突入!となる可能性もあると個人的には見ています。


米国経済を形作るもの


ただし、大幅な特に富裕層への減税となる今回の過剰な税制改革は、このままの内容であれば個人的には反対です。


行き過ぎた減税というものは、いつの時代も政治家の人気取りの道具として使われるものの、長期的には財政赤字とその国債から生じる金利支払いにより、国力を削ぐことは間違いありません。


特に富裕層への過剰な減税は、格差の拡大とその固定により、米国の成長エンジンの源、アメリカンドリームが万人に開かれているという夢を削ぐものでしょう。


誰にとっても税金とは愉快なものではないでしょう。しかし所得の再分配、格差是正としての税制の意味を考えると、私は特に富裕層に対しての増税は社会の活力を削がない程度には必要と考えますし、適切な税こそが、実はアメリカという国を適切に形作るものではないか、そう思っています。


最後に一つ追加です。損失確定する銘柄もある、というのはIBMを指している可能性も有ると個人的には思います。AmazonとIBMの勝敗がより鮮明になりつつあり、ファンダメンタルズ的にもIBMに優位な材料は特に見当たらないためです。


バフェットが同銘柄を更に売却した場合は、強い下げ圧力が生じることとなり、ホルダーの方は注意が必要だろうと思います。


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