P&G(プロクター・アンド・ギャンブル : PG)の投資判断(1) 切り刻まれるブランド



今回は世界最大の一般消費財メーカー、プロクター・アンド・ギャンブルを考察していきます。


生活消費財は不況時にも殆ど売上が落ちない防御的なセクターです。その中でも本銘柄は60年以上の配当の連続増配を行っていることも併せて、ポートフォリオのボラティリティを低く抑えたい長期投資家に人気の銘柄だと思います。


1837年にロウソク業者のプロクターと、石鹸業者のギャンブルの二人により起業されました。創業以来、米国に根付いた消費財メーカーとして成長を続け、2000年代前半までは売上の大半を米国内が占めていました。



現在は海外売上が60%を超えており、ここ10年ほどで急速にグローバル展開を行ってきた企業になります。





現在世界180ヵ国以上で事業展開を行い、保有する代表的なブランドは下記のセグメントに分けられています。


Beauty部門
・ヘアケア製品(パンテーン、h&s)
・化粧品(SK-II)
Grooming部門
・シェーバー(ジレット、ブラウン)
Health Care部門
・口腔ケア(Crest)
・パーソナルヘルスケア(胃腸薬、ビタミン剤、サプリ)
Fabric & Home Care部門
・衣料用洗剤(アリエール、ボールド)
・柔軟剤(レノア)
・台所用洗剤(ジョイ)
・エアケア(ファブリーズ)
Baby, Feminine & Family Care部門
・紙製品(パンパース)
・生理用品
・トイレットペーパー、ペーパータオル(バウンティ、チャーミン)


さて、近年、同社は競合他社との激しい競争や、小売店のプライベートブランドの台頭による競争で、その業績は伸び悩んでいます。


そのため、2014年頃からコア部門以外の電池事業、ペット事業などのブランド売却を行い、利益率の低いブランドを整理することで高収益体質への移行を目指しています。


同社の試みはどの程度、実を結んでいるのでしょう。


それでは年次報告書を見ていきましょう。


※プロクター・アンド・ギャンブル 2017年 年次報告書より引用


部門毎の売上では、5つの主要部門がまんべんなく売上と利益を出していますね。





ブランドの整理を行っている同社ですが、2017年はその影響を含めると(Volume with Acquisitions & Divestitures)1%、あるいは除外すると(Volume Excluding Acquisitions & Divestitures)2%とかろうじて売上増を達成しています(為替の影響は除いています)。


引き続き財務諸表を見ていきます。


※縦軸の単位は100万ドル


競合他社との競争の激化と保有ブランド売却を反映して、売上はここ数年低迷しています。2016年から売上及び売上高純利益率はようやく下げ止まり横這いないし微増に転じた印象です。


なお、2017年は利益が著明に改善しているように見えますが、純利益にはブランド売却による一時利益が46億ドル含まれていますので、除外して考えると2016 → 2017は100 → 102億ドルとほぼ純利益は横ばいです。


つまり10年間ほとんど売上と純利益が増加していないという、同銘柄を取り巻く厳しい市場環境が透けて見えます




先述のように2017年度はブランド売却による一時利益があったので、その分を除くと2017年のEPSは3.69となります。ここ9年EPSは伸びていない計算になりますね


但し、配当は順調に増配を繰り返しています。




ROE, ROAともに2017年度は改善が見られますが、同年は一時利益による修飾を受けていることに注意が必要です。




BPSは近年の売上減を反映して漸減傾向です。




営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローの比率からは、設備投資などをあまり必要としない同社の財務体質が伺えますね。しかし、やはりキャッシュフローは近年足踏みを続けています。


この結果からは、全体として、ここ10年ほど足踏みしている同社の苦境が伺えます。ブランドの売却、コア事業への集中で利益率の改善を目指していますが、未だ往時の勢いを取り戻しているとは言い難い状況です


さて、このように苦戦が続く同銘柄ですが、市場はPER25倍前後、PBR4.4倍前後と高い評価を下しているようです。その判断は正しいのでしょうか。


次回は私の投資判断を、バリュー投資、特に安全域の面から考察していきます。




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