トヨタ自動車(TM)の投資判断(1) コモディティ銘柄の興味深い先行き




今回は日本を代表する企業、トヨタ自動車(NYSE:TM)を考察していきます。


投資家の皆様の中では、人口減、低いROEなどの日本市場自体への懸念や、また景気後退とともに直ぐに減配を行い、自社株買いを行わないこと、そして多発する粉飾決算などの日本企業の姿勢といった様々な悪い記憶が重なり、日本株には未来が無い!と思われている方も多いのではないでしょうか。


更に、台頭する電気自動車(EV)やカーシェアによって従来の自動車業界自体の衰退がまことしやかにささやかれ、多種多様な悪材料が積み重なっているのが本銘柄の一面かと思います。


また2030年までに独、2040年までに仏英が内燃機関による自動車販売を禁止することを発表しており、同業界には逆風が吹き荒れています。


ですがこういった最悪の見込みの中から高リターンが生まれることも、またバリュー投資の一面と考えますので、あえて今回は日本株の雄、トヨタ自動車を取り扱っていきたいと思います


自動車業界そのものが数々の悪条件により、全体的にPBR 1倍程度に上値が抑えられた銘柄が多く、個人的には大変興味深い業界だと思いますのでぜひお付き合いいただければ幸いです。



トヨタ自動車


会社概要


トヨタ自動車は世界最大の自動車メーカーで、トヨタグループの中核企業です。


1933年に豊田佐吉により創業され、クラウン、コロナ、カローラ、ハイエースなど、その時代毎に高品質とコストダウンを両立させる技術に長けたものづくりを行うことで成長を続け、世界有数の企業に成長しました。


手堅い既存技術をブラッシュアップし、低コストで実用性・汎用性に優れる製品を作る技術に長じており(タクシー専用車のコンフォートなどは100万キロの走行が可能とのことです)、高い顧客満足度で知られます。


保有するブランドとして、一般ブランドのトヨタ、高級車ブランドのレクサスがあり、また傘下に小型車に特化したダイハツ、トラック・バスといった商用車に特化した日野自動車を保有しています。


セグメント



※トヨタ自動車 IRより引用。


トヨタ自動車の事業セグメントは以下になります。


・自動車事業:
ダイハツ・日野を含むメイン部門。

・金融事業:
自動車ローン・リース、クレジットカードなどの部門。

・その他事業:
トヨタホーム(住宅事業)
クリーンエネルギー発電事業
農業IT化事業
バイオエタノール事業
トヨタマリン(ボート)などの様々な部門。


上図(赤字)を見ると、売上・営業利益ともにメインの自動車事業がほとんどを稼いでおり、全体の一部が高利益率の金融事業という構造ですね。




また、地域別の売上としては北米・日本・アジアが主となっており、営業利益はその多くを日本国内で稼ぎ出している構造があります。


財務諸表


それでは財務諸表を見ていきましょう。


※縦軸の単位は100万円。


大変低い売上高利益率が目を引きますね。そしてリーマンショック後には赤字となっており典型的な景気循環銘柄と言ってよいかと思います。


なお赤字は58年ぶりであったとのことで、こういった製造業としては相当に優秀な成績ですね。


※縦軸の単位は円。


リーマンショックとその後の低迷期を含め、この10年を見るとほとんどEPSが増加していないという構造が見えます。




景気が順調な時はROEは15%程度とまずまずの水準ですが、景気後退期に一致し低迷を認めます。


※縦軸の単位はUSD。


そんな中でもBPSは積み増しを続けており、リーマンショック後に経営破綻に至ったゼネラル・モーターズや、リーマンショック時に債務超過に至ったフォードなどの自動車企業よりも、一段安定した経営基盤が伺えます。


※縦軸の単位は100万円。


キャッシュフローからは莫大な研究費を必要とする業界の特性が見えますね。トヨタの研究開発費は2017年度は国内企業で唯一1兆円を越え、かつて2006年には米製薬会社ファイザーを抑えて世界一位だったのです。


コモディティへの投資は是か非か


以上を総括した私の同銘柄への印象は、コモディティに属する企業というものです。


先述の電気自動車の台頭に加えて、この10年殆ど伸びていないEPS、高い設備投資費や研究費用、激しい競争環境、またどうしても高額となるその製品の性質が相まって景気循環によって直ぐに低迷を繰り返す業界事情もあり、実に先行きが見えない印象を受けますね。


それでは、景気循環銘柄で利益を挙げるのは不可能なのでしょうか?もしそうだとすれば、何故ウォーレン・バフェットを始めとしたバリュー投資家はゼネラル・モーターズに投資を行っているのでしょうか?


本シリーズではこういった割安銘柄に対する、グレアムの投資法を用いた考察を行っていきます。特にこういった悪条件を考えた上でも、なお割安と思われる水準に対しての考察を行っていこうと思いますので、乞うご期待下さい。




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