米国株・ETF投資で損するドルコスト平均法、得するナンピン買い





株価下落時に株式の買増しを行うナンピン買いは、ドルコスト平均法や順張りによる株式購入と比べて、損失を拡大させやすく危険な株式の購入方法と言われます。


ナンピン買いを行っていると、確かに下落局面では買い付け中に雪だるま式に損失が膨らんでいく感覚があるため、損失を大きくする危険性が大きいようにも思われ、経験者の中ではこの方法をあまり良く思わない方も多いのではないでしょうか?


しかし私の行っているバリュー投資では、安く購入することが利益の源ですから、購入を検討する多くの局面で結果的にナンピン買いとなってしまいます。


今回は、皆が言うようにこのナンピン買いが本当に「危険」な考えなのか、考えてみたいと思います。




株式・ETFに対する投資方法


私が購入を検討する銘柄は、バフェット銘柄やグレアム銘柄などのいわゆるバリュー銘柄です。


そして、強いブランド力を持つ企業や、多額のキャッシュを持つ企業が一時的な理由で売りにさらされたときを待って、集中的ないし価格が本質価値より低いと思われる期間に限定してドルコスト平均法を行い、買い付けすることにしています。


ではもしこの買い付けの際に、その銘柄の本質的価値が判明していると仮定すると、どういった購入方法が最適になるでしょう?


過去のバブル時の買い付けを考える




こちらはリーマンショックのバブル崩壊から、数年間のある株式のチャートです。


仮に、この株式の最適な買い付け価格(=本質価値)が赤線部の2000ドルであったとします。


この場合の最適な購入方法を考えてみましょう。


ナンピン買いの場合




まずナンピン買いの場合を見ていきます。


ここでは本質価値の2000ドルを下回った直後から機械的に買い付けを開始していきます。すると株価の底、及びその後の約2年半に渡って、ナンピン買いでは素晴らしい長期間の買い付け期間が得られることになりますね!


問題点といえば、ナンピン買いの最中には一見、損失が拡大しつづけるため、この投資法に慣れてない方にとっては、下がる株価に対して買い向かうことは砂に水を撒くかのような恐怖に陥りかねないことがありますが、本質価値を十分に把握し、かつ個別株ではある程度の分散投資を行うことで、この問題は大半解決可能かと思います。


順張りの場合





それでは一般的に推奨されている順張りを見ていきましょう。


これは株価が底を付けて、10-20%程度の値を戻して、市場のセンチメントが改善したころ合いを見計らって投資を開始する手法です。


一見、他の市場参加者と足並みをそろえられるため、安全安心と思えますね。


しかし上図を見ていくと、順張り開始から買い付け終了までのお買い得期間は1年半程度と、格段に短くなっている訳です。


ドルコスト平均法の場合





最後に、教科書的に良く推奨されているドルコスト平均法を見ていきましょう。


上図のように本質価値を考えずに、毎月均等に購入していったとすると、購入期間は長くなる一方、その平均購入単価は今までの例のなかで最も高い価格になりますね。


何と、ここではドルコスト平均法は最も損をする買い方になってしまいます。


「安心」が高くつく投資の原則


ウォール街の原則として、他の市場参加者と同じことをするとまず市場平均には勝てないことが挙げられます。


これは同じものを買うにせよ、他の市場参加者と競って買う場合では、購入対象の価格が跳ね上がり、いわば「安心」を買うことに相当なコストを支払う必要があるからです。


ナンピン買いの優れた点は、しっかり本質価値を把握していれば、機械的な買いによって、この「安心」コストを最小限に回避し、最も長期間買い付けを行い続けられることにあります。


一般的に株式を底値で選んで買い付けるのは不可能ですが、機械的なナンピン買いでは、この底値を含めて、格段に安い価格を選んで購入出来るのが強みなのです。


一方、ドルコスト平均法は、方法が単純かつ有名であるため行っている最中の不安感が小さい一方で、その「安心」を得るため、株価が高騰した期間も買い続けるという、高い参加料を払うことが問題なのです。


そして証券会社など、一般的な「専門家」が勧める方法の多くには、取引回数を多く長くとると証券会社に利益が入る構造がベースにあることを、併せて考えておく必要もあると思います。


また、このようにドルコスト平均法は最良の方法とは思っていませんが、為替においては有効と考えている点、申し添えておきたいと思います。


私の投資法


ですから、(1) 本質的価値を下回った価格で、(2)ナンピン買いを、(3) 出来るだけ長く続けることが理論的に優れた買い方だと、私は考えています。


ですが恐慌時に、さまざまな悪材料によって売りが殺到する群集心理を把握するのは無理ですから、株価の底は分かりません。そのため、ナンピン買いの開始から30-50%の株価下落を見ることはちょくちょくあります。


かのピーター・リンチは、「ナイフは落ちてきているときは掴まない方が良い。地面に刺さってグラグラしているときに掴んだ方がよい。」と言いました。


しかし残念ながら、グラグラしつつも、更にナイフが落ちていくことも度々経験しますので、さらなる損失は覚悟して臨む必要があります。


ですが、(1) 底値で買うことは不可能であること、(2) バリュー投資家にとって優良株の買い局面は長く安いほど良いことを考えると、ナンピン買いは理論的に大変優れた購入方法と考えます。


そして、ナンピン買いを行うのに、最も重要な考え方が本質的価値だと思います。


本質的価値を把握せずに、株式を選んでナンピン買いを行えば、株価が墜落する事故銘柄を引き当て、その損失が膨らみ続けて火ダルマになる可能性が大ですから、その場合はナンピン買いはまさに「危険な」投資法だったことになりますね。



ナンピン買いの弱点


ちなみにナンピン買いの弱点を一つ挙げるのであれば、それは本質価値の見積もりに問題があった場合です。


というのは企業の本質価値の評価が間違っており、一時的な業績低迷で無く長期的な業績低迷に至った銘柄を引き当ててしまった場合には(しばしばあります)、残念ながらそのまま損失が拡大していくことになるわけです。


私はこのようなことが判明した場合は、間違いが判明した時点で素直に株式を売却し、損失を確定することにしています。


この場合は痛い授業料を払うことになりますが、その間違いは受け入れて、次の株式選択に役立てる材料とすべきだと思うのです。


なお、その際も購入前から本質価値によって担保されていた安全域は非常に重要となります。バフェット曰く、「十分な安全域をもって株式を購入した場合、考えが間違っていたとしても出口は必ずある」としていますし、私が今まで経験した失敗でも、購入前に確保していた安全域のおかげで、市場からの退場になってしまうようなあまりに手痛い失敗を起こしたことはありません。


いつまでナンピンするかという問題


私の経験上、市場が付けたミスプライスと、本質価値の間のスプレッドは半年から2年程度で補正されることが殆どのように思います。


そして株式を購入して3年以上経っても株価が浮上しない場合、自分の見積もりが何か間違っている可能性が極めて高いように感じています。


ですから、3年待っても株価が浮上しないときに、私の場合は例え株価がいくらであっても損失を確定するようにしています。そして逆に3年たつまでは、よほど本質価値が毀損されるような出来事が生じなければ、適時買い増しを続けながら待つようにしています。


グレアムの場合はこの期間は2年としており、バフェットの場合はその売買を見ていると概ね3年程度のようです。バリュー投資家の間でもここにはそれぞれの流儀があるように思いますが、私の場合はあまりに長く待つ場合の機会損失も考慮して、ここは3年と考えています。


最後に


バリュー投資の名手、ウォルター・シュロスは80歳を超えた頃に株式の購入方法のコツを問われ、こう答えました。


「値段が下がっている途中に買うのが好きかな。値段が上がっている株を買うのは、あまり好きじゃない。」


95年の生涯で18回もの不況を耐え抜き、生涯で年率リターン21%を安定的に出していた彼の発言の意味を私はよく考える必要があると思いますし、私自身、ここを忘れず投資を続けていきたいと思っています。



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