アメリカン・エキスプレス(AXP)の投資判断 (2) 粘着性のあるブラックカード




2016年にアメリカン・エキスプレスへ複数の逆風が吹きつける中、集中投資を行った根拠を今回はお伝えします。



価格面の安全性


私は投資判断を行うにあたり、メアリー・バフェットの方法による株式の本質的価値の評価を行っています。当時の購入条件(当時のEPSと株価)で予測利回りを計算してみます。


本銘柄は過去16年の平均EPS成長率が10.4%でした。現在の成長率が続くとすれば、(EPS成長率)^10を当時のEPS 5.05に乗じ、10年後のEPSは13.6となります。これに過去10年の最低水準PER 7.96を掛けると、10年後の予測株価は108.2となります。


これによる予測最低利回りは7.2%となります(配当金含まず)。これに過去10年の平均配当率は1.7%であるため、配当金を加えると9%程度の予測最低利回りとなります


そのため、まずは価格面から十分な安全域が得られていると判断しました。




市場が懸念する材料


では懸念となっていた同銘柄のリスクはどう考えるべきでしょうか。当時、(1)2016年のコストコのアメリカン・エキスプレスカードの取り扱い停止により、取扱高の8%が失われるという懸念、(2)競合他社のクレジットカードの攻勢による懸念、(3)China shockによる業績懸念がありました。


コストコの問題


順番に考察していきます。まず一番目のコストコの問題です。


アメリカン・エキスプレスのカードにはグリーン(一般カード)、ゴールド、プラチナ、ブラックの種類があります。この中でも、プラチナとブラックカードは自身で申し込みが出来ず、数年間の使用歴をカード会社が評価した上でその使用を許可する招待制(インビテーション制)を取っています。プラチナカードやブラックカードは富裕層には大変な人気で、これを取得するために10年ほどクレジットカードの使用履歴を積み上げる、「修行」をされる方もかなりいらっしゃるようです。


というのも、プラチナカードやブラックカードには富裕層が好む様々なサービスが用意されており、飛行機の座席の無料アップグレードやホテルのアップグレード、専門コンシェルジュによる応対などが受けられるようになっています。しかしその分、年会費は高額となっており、ブラックカードでは35万円となります。


こういった富裕層の顧客が、苦労してインビテーションに至ったブラックカードをコストコで買い物が出来ないというだけの理由で手放して、別のカードに乗り換えるとは、到底思えません。例えばコストコ用のカードをもう一枚持てば問題は解決します。


また、クレジットカードビジネスでは、メインカードの切り替えに様々なインターネットサイトや公共料金での切り替え手続きが必要になるという心理的な障壁も存在します。


私はこれを消費者に対する、「粘着性」を有する性質のビジネスだと考えます。


アメリカン・エキスプレスのEPSは年間成長率が10%程度でここ15年ほど推移していますので、コストコの契約解消でEPSが8%減少したとしても、1年間待てば、再び同じ程度のEPSに戻るのは明らかです。


競合するカードの問題


次に競合カードの問題です。


サファイア・リザーブ・カードなどの他社カードとの競合は同銘柄の売上を確かに一過性には毀損するでしょう。しかし、同社のプレミアムカードの位置は遥か以前からダイナーズや、ビザ・マスターカードの多数のプレミアムカードとの競争に打ち勝って得られたものです。


サファイア・リザーブ・カードも、いつまでもポイントのバラマキは続けることは不可能ですし、上記の粘着性を考えると今回もその優位は覆らない可能性の方が高いでしょう。


話は変わりますが、思い起こせば2014-2016年頃の日本のクレジット業界でも、一部のカードがポイントのバラマキを続け一時的に多くの顧客を獲得したものの、その還元を続けられず結局はポイント還元率の「改悪」をせざるを得なかった状況を私は思い出します。


China shockの問題


そして最後にChina shockの問題です。これはリーマンショックも赤字を出さずに乗り越えた同銘柄にとって、せいぜい一過性の問題に留まるだろうことでしょうし、また米国での売上が大半を占める同銘柄においては根本的にはあまり影響がないことです。


従って2016年の暴落は一過性の問題が複合したものと考えました。ブランド価値自体が毀損された訳ではありませんので、時間経過に伴い業績は改善が見込めます。


こういった利益が得られる目算が非常に大きい銘柄には、私は集中投資を辞さないこととしておりますので当時の総資本の65%を投資しました。


集中投資の問題点としては、不正会計や不祥事などの悪材料が判明した場合に、EPSやROEなどのファンダメンタルズ自体が長期低迷し、株式もその影響を受ける可能性があることが挙げられます。それを避けるために、購入する価格による安全域を十分にとること(この場合は最低10%程度の予測利回り)、また寡占によりビジネスモデルが数年間は変動せず成長を続ける見込みであることが、大変重要となります。


クレジットカードという、現代社会のインフラといってもいいビジネスモデル、かつ顧客の高い忠誠度を併せ持った本銘柄で無ければ集中投資は危険だったでしょう。



今後の投資判断


その後、同銘柄の売上は一旦は市場懸念通りに減少しましたが、その後短期間で売上減は底を打ち、そ
れから1年が経過した現在では株価は反転しています。結果、同銘柄からは1年で25.4%の年間利回りが得られています


最後に、今後の保有方針に関してです。


アメリカン・エキスプレスを始めとしたクレジットカードビジネスは、電子決済サービスにより中長期的には衰退していく可能性はあると思います。かつてアメリカン・エキスプレスはトラベラーズチェックで名を馳せましたが、トラベラーズチェック自体が既に過去のものとなっています。クレジットカードもフィンテックの台頭により、同様の経過を辿ってしまえば、本株式への投資もいわゆる「塩漬け」により、半永久的な資本喪失に至る可能性はあるでしょう。


現在は、PER17.5と過去10年の平均PER15.7よりも人気が高まっており、既にこの銘柄から期待される予想利回りはS&P500をわずかに上回る程度です。そのため本株式は売却にかかる税を除いても他銘柄への移行が利益が勝ると判断した時点から、ポートフォリオ内比率を徐々に下げていく予定です。





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