トランプの精神医学分析(2) 炎と怒り、その行く末





10月にお伝えした前回の本シリーズでは、トランプが精神医学的にサイコパス(反社会性パーソナリティ障害)と考えられること、今後の彼の言動にはその病的要因も深く関連してくるだろうことをお伝えしました。


そしてその疾患特性の通りに、やはりトランプは北朝鮮・中国・中東などの国際情勢に関して短絡的な言動を繰り返してきました。ですがそんな彼も最近はTPP問題の見直し、移民問題での市民権獲得の提案など、自身の前言を翻す羽目になり、あらゆるメディアからの反目を受けて次第と劣勢に追い込まれつつあります。


さまざまなメディアでトランプの言動は特集されていますので、当ブログは他とは視点を変えて、引き続き精神医学の観点から彼の今後を予想してみたいと思います。




サイコパス


サイコパスという人格の病


まず反社会性パーソナリティ障害の疾患特性を見てみましょう。


・誇大的な自己価値観
・病的な虚言
・自己の利益のために人を騙す
・良心の呵責・罪悪感の欠如
・口達者・表面的な魅力
・現実的で長期的な行動計画の欠如
・短期・行動のコントロールの欠如
・奔放な性行動、複数の離婚歴
・法律にかなって規範に従うことができない
・衝動的で計画性がない
・喧嘩や暴力を伴う易刺激性
・自分や他人の安全を考えることができない
・責任感がない
・幼少時の問題行動


こちらを満たすものが反社会性パーソナリティ障害と診断されるわけですが、彼の生育歴や現在の発言を見ていくと、上記全ての基準を満たしていると私は感じています(米国の精神科医達も連名で同症の診断を支持しています)。


特にトランプの「私は天才だ」などという最近の発言は、順当なパーソナリティーからは、まずまず見られない発言だろうと思います。


つまり彼の価値基準は一般人のそれとは異なり、上のような疾患特性に基づいてさまざまな決定がなされているわけで、そこを勘案して彼の発言を見る必要があると思います。


通常は人間関係や社会関係での損得で、我慢しようと思うようなことや、思いもしないことでも、いわばストッパーが壊れているのがこの疾患であり、その関係上、奔放な反社会的発言・嘘・詐術というものを無計画に繰り返すのが、今後の経過と思われるのです。


様々なメディアは彼の発言や立場からその意見を分析しようとしていますが、ここでは通常の分析は役に立たないことを考えてかかるべきです。というのは、通常と同じ思考をしないこと(出来ないこと)こそが、彼の病態だからです。


「炎と怒り」という彼の発言は、その発言内容だけに留まらず、まさに彼の精神状態そのものを表していると私は思います。


トランプを取り巻く敵たち、その現状


ロシアゲート事件の捜査官、モラー氏を解任しようと2017年6月にトランプが暗躍していたことが1月25日明らかになりました。


コミー司法長官の解任でも司法妨害疑惑に問われていますので、懲りないというか、こういったことが自身の立場をより悪くするのが見えないのも彼の疾患特性ゆえなのでしょう。


米国の内政では、移民問題・繰り返す排他的な差別発言により、民主党はおろか、身内の共和党からも突き上げをくらって内政は凍結状態です。


また大統領を支えるスタッフにも相変わらず事欠く有様です。スタッフとしても沈む可能性が高い船に居続けるのならば、あえて彼に反目した方が、今後のキャリアには良い影響を与えるという損得勘定が働くのでしょうね。


またかつての盟友バノンからも、政権の内幕を「炎と怒り」の中で暴露され、それに関して逆ギレしていましたが、自身が行った数々の行動と国家安全保障会議のメンバーに任命した自身の任命責任が原因なのですからそれは筋違いというものでしょう。


その他にも、各国首脳とのギコチない関係、人種差別的な発言による各界との軋轢など数えれ挙げればキリがありません。


訴訟しきれない数の「敵」


かつてはトランプは病的なほどの数多い訴訟でもって、相手を威嚇しコントロールしてきました。


しかし、自分と家族、熱心な支持者以外はほぼ敵という現状に至って、その手段ももう用いることが出来なくなっています。


そして実際に訴訟を起こしたとしても、彼の発言に明確な虚言や齟齬がありすぎて敗訴は明らかでしょうから、顧問弁護士も訴訟しようがないのでしょうね。


サイコパスの社会的特性として、虚言や攻撃を繰り返した結果、職場や家庭でも誰からも相手にされず孤立していく患者を多々見ますが、トランプの場合もここまで順当に同じパターンを辿っているように私は思います。


会社の経営者、弁護士、セールスマン、外科医など競争が激しく、疾患特性が有利に働く環境ではサイコパシーの患者が環境を上手く利用することも時にあるのですが、アメリカ合衆国の大統領というものは、どうもセールスマンと同じようにはいかないようです。


私の臨床経験から見るトランプの今後


私の臨床経験上、このような疾患では、職場でも最初は他人の功績を自身のものとし、また他者を逆に攻撃し貶めることで一時的に優秀にみられる方も多いです。


しかし長期的には、結局は反目した周囲からの反動によって上手くいかずにその地位を追われ、人間関係がこじれきってから受診に至ることが多いように思います。


今年は米中間選挙が控えており、その前哨戦と位置づけられたバージニア州知事選では既に民主党が勝利しています。共和党議員から見れば「足手まとい」のトランプをいつまで支持するかという実質的な損得、また共和党議員でも党のためとは言え、彼を支持し続けることへの感情的な軋轢もあるでしょうから、弾劾の懸念は付きまとうものと思います。


直近の支持率調査では、税制改革後にも関わらずその支持率は40%をいよいよ割り、37%となりました。


支持率回復を狙いトランプは太陽光パネルや洗濯機などに対するセーフガードを発動させていますが、どの程度米国経済への実際の恩恵があるものか、そして恩恵を介した支持率改善効果があるものか私には疑問です。


そして支持率が40%を割ったという今回の水準は、私は大きな意味があると思います。というのは過半数を大きく超えて大統領の支持率が低下したとあっては、共和党議員は自分たちの次の選挙での失職が大きく懸念されるため、その弾劾活動が一段現実味を増してくるからです。


ロシアゲートのトランプ聴取を控えて、この傾向はますます強まるものと予想しますから、今後のロシアゲートの進展には要注目です。


そしてもう一つ、サイコパスの患者は物事に熱中する一方で上手くいかなければ飽きて投げ出すことも多いのです。共和党からの弾劾、ないしロシアゲートで逃げ場なく追い詰められた場合はあっさりと辞任してしまう可能性もあり、ここも注目です。


最後に


周囲の理解が得られなければ例え米国大統領であっても、世界を思う通りに動かすことは出来ないのだなと、今回トランプのダボス会議上のTPPの翻意からは思います。


かつてバフェットが信頼を寄せた、ネブラスカ・ファニチャーマートの経営者、ミセス・ブラムキンは成功の秘訣を問われて、「正直に、一生懸命に働くことさ。それ以外に成功する手段はない」と言いました。


日々の積み重ねによって生まれた厚い信頼あってこそ、継続した成功があると思いますし、一時的な目立つ言動で人の上に立ってもそれは本質的には長続きはしないのだろう、私はそう思っています。



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