ウォーレン・バフェットは示唆とウィットに富むコメントがその持ち味の一つです。
ただ惜しむらくは、彼は時間をかけて考えを1から10までゆっくり説明するというタイプではありません。例えば彼は自身で本を執筆したことは無く、あくまでも他者がその発言をまとめた本が存在するのみです。
そのため、彼のコメントの解釈に時に戸惑うこともあるかと思います。
このシリーズでは、私が投資の参考にしているウォーレン・バフェットの投資判断・市場判断に関して、何故そのようなコメントを行ったのかを折にふれて考察していきたいと思います。
ウォーレン・バフェットはBloomberg 8月31日付の記事にて、同社のインタビューに対し下記のように述べました。
・数年前から続く強気相場により割安な銘柄を見つけ出すのは困難になったが、依然として債券よりも株式の購入を検討している。
・バークシャーが資金を多く保有しているのは株価がこれまでの大半の時期と異なり割安でないからである。2008年の金融危機後は株式選別は大変容易なものだった。
このコメントを今回は考えていきましょう。
現在の米国市場のS&P 500の市場平均PERは24.9と歴史的に高い水準にあります。これは実はリーマンショック前とほぼ同じ水準です。
株式がこれだけ高値を付ける理由に、株式最大のライバル、債券の利回り低下が挙げられます。
現在の米国債の利回りは、低金利政策によって低いレベルにとどまっており、中期債で年利回り2.2%程度です。
市場の特性として、米国債の金利が非常に低い場合、より高い利回りを求めて資金は別の資産クラスへ移動する特性があります。
さて、ここで株式の利回りを考えていきます。
PERは企業が同じ程度の利益を出し続けた場合に、株価は何年先の利益まで織り込んでいるのか、という指標です。そのため1/PERは株式の予測利回りとしても用いられます。
そのため、現在の市場平均PERではその株式の予測利回り(1/PER)は4%程となりますので、現状は理論的に、株式の利回り(4%) > 国債の利回り(2.2%)が明らかということになります。
なおリーマンショック時にはS&P 500の平均PERは25.6でしたので、株式期待利回り4%<中期国債利回り5%となり、バブル崩壊前は、理論的に株式利回り< 債券利回りが明らかとなった時期です。
つまり同じ位のPERの、現在とリーマンショック前ですが、金利を考慮すると下記の関係が言えます。
現状 : 株式の予測利回り(4%) > 国債利回り(2.2%)
リーマンショック前 : 株式期待利回り(4%)< 国債利回り(5%)
ここで注意することがあります。株式はリスク資産ですので、年限まで保有しきれば無リスク資産である国債よりも、そのリスクプレミアムを反映して、利回りは高くなければなりません。
理論的に、株式利回り≧債券の利回り+α、でなければ投資対象とはならないということになります。
まとめますと下記になります。
・現状 : 株式の予測利回り > 国債利回り
・リーマンショック前 : 株式期待利回り< 国債利回り
・基本的に、株式利回り ≧ 債券の利回り+αとなる性質がある
そのため現状の低金利が長く続く金融政策下では、その金利に合わせた株価水準となるまで強気相場がまだ続く可能性が高いことになります。
その考えで、現状の市場全体の価格と金利を見た場合に、「債券よりも株式を選好する、但し株価自体は割安ではない」という彼の発言には納得がいきます。
過去のリーマンショックの前、株式市場の価格高騰と債券の金利上昇を見て、バフェットは株式の購入を停止しました。
また政策金利が6.5%と高金利だった2000年代前半はバフェットは資産の30%以上を債券に投じていました。
株式と債券、キャッシュなど資産クラスごとの予測利回りを考慮して、その時の市況で最も高い利回りが得られる可能性が高いポジションにバフェットは投資を行ってきています。
米国投資家としては、現在の低金利では米国債はメインの投資先とはなりません。しかしその動向は常に把握しつつ投資を行う必要がある、私はそう思います。
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