たくさんの人の病気の場面を見ていると、時にはその人の人生が透けて見えるときもあります。
ある激しい雨の日でした。いつものように当直室(仮眠室)に入ると、机の上に何やら張り紙があります。
「〇月×日 近くの山林でレンジャー部隊が訓練をしています。ケガをしたりなどあれば当院に搬送される可能性もあり、その場合はよろしくお願いします。」
レンジャー部隊も今日みたいな雨の日は休みでないのかなー、などとぼんやり思いながら過ごしていると、夜遅く、救急外来の看護師から来客の電話です。
救急看護師「先生、山で訓練をしていたレンジャー部隊の隊員が、沢に足を取られて滑落したとのことです。外来へお願いします。」
あら、考えていると本当に来るものだなー、と思いつつ外来に行きます。
隊員「よろしくお願いします!足を痛めてしまったようです!」
すごくハキハキと話される方で、いかにも軍隊!という感じです。横には上官が付き添ってこられています。
私「それではさっそく診察していきますね。足は・・・っと!!!(足関節があかん方向に曲がってますやん。これは脱臼してるな(/・ω・)/。骨折もあるかも・・・)」
私「良く歩いて来ましたね・・・。これは、とても訓練は無理ですねー。整形外科の専門医にも診てもらったほうが良いと思います。まずは安静をとりましょう。」
隊員「それは!?先生困りま・・・」
上官「いや、彼はその程度のケガは大丈夫です!」
なぜか上官が本人を遮って代わりにしゃべります。
上官「ここにも歩いてくることが出来ましたので彼なら出来るはずです。どうだ!〇〇(本人の名前)、お前歩けるよな!」
隊員「はい!行けます!!」
私「!?」
上官「痛みは少ないだろう!」
隊員「はい!行けます!!」
私「!!!!!!?」
上官「明日の訓練も出れるよな!」
隊員「はい!行けます!!」
私「( ゚Д゚) ・・・・・・。」
上官「という訳で、今日は帰ります。彼も明日の訓練には出たがっていると思います。」
という訳で、二人は帰っていきました。本人希望(?)なのでどうにも出来ず、翌日基地の医師に見てもらうように重々伝えましたが、うーん、はたして受診するんでしょうか。
何しろ軍隊ですから、多少のケガは当たり前のことかも知れませんが、恐るべきはレンジャー部隊です。
われわれが平和に暮らしていられるのは、あの自衛隊の人たちのおかげなのだなーとしみじみ思い、本当にありがとうございます、と心から思った夜でした。
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