前回までにお伝えしたように、アーリーリタイアした場合は、その後の人生において給与所得というインフレヘッジを使うことが出来なくなります。
そのため、(インフレ率 + 生活費)を長期の運用で継続的、かつ十分な確実性を見込んで得る必要があります。
私の前回の結論は、長期的にも高いリターンが得られる可能性が高い、米国市場に連動したETF(VTIやSPYなど)に超長期投資を行うというものでした。
さて、具体的な資産額を考えるに当たって必要なものは米ドルのインフレ率です。
米国のインフレ率
※Wikipedia US, Inflationより引用
上図はここ100年間のインフレ率の推移になります。1913年から2017年までにインフレ率は累計2380%に及んでおり、ここから年間インフレ率を逆算しますと、3.1%/年という結果が得られます。
図を見てわかるように、デフレが世界恐慌が生じた後に集中的にみられるものの、この期間の殆どはインフレであったことが見て取れますね。
大事なことですので繰り返しお伝えしますが、経済史においてはインフレこそが主役で、デフレが続く現在の日本は珍しい状況なのです。
さて、それではアーリーリタイアを始めた後の、米ドルのインフレ率を安全域を見込んで5%としましょう。この数字は二次大戦前後やオイルショック時などの物資欠乏時にはインフレ率が実際に20%くらいまで跳ね上がったこともありますので、あながち的外れな数値ではないと思います。より十分な安全域を見込みたい方は10%くらいのインフレ率で試算しても良いかと思います。
生涯に望む生活水準
もう一つのファクターは、あなたがどれくらいの生活水準を望むかということです。ここは個々人の考えで異なるところですが、まずは手取り年収500万円での暮らしを希望するとして計算しましょう。
また、S&P 500種の過去50年のリターンは年10.85%でした。米国が猛烈なデフレに襲われ、株式リターンが長期に低迷した場合を考慮して(大恐慌のような事例を考えます)、超長期のリターンは8%/年程度で見積もりましょう。
(リタイア後生活費) = (株式リターン 8%/年) - (インフレ率 5%/年)
このようにインフレ率と株式利回りの差によりリタイア後の生活費は規定されますので、今の500万円の価値の暮らしを将来も継続するためには、500万円 ÷ (3%) = 1.67億円が初期資産として必要な計算です。
また、リタイア後に望む生活費に応じた必要初期資産は下記になります。
手取り200万:200万円 ÷ (3%) = 6700万円
手取り300万:300万円 ÷ (3%) = 1億円
手取り500万:500万円 ÷ (3%) = 1.67億円
手取り700万:700万円 ÷ (3%) = 2.33億円
手取り1000万: 1000万円 ÷ (3%) = 3.33億円
なお、配当や売却益にかかる税金は除いたうえで上記の結果ですし、超長期では途中で税制が変更される可能性もありますので、実際はもう少し初期資産を多く見積もる必要があるでしょうね。
給与だけでは高すぎる壁
上記の額はほとんどの方にとって、給与収入だけで到達するのは困難な額でしょう。恐らく退職金を含めて、どうにか到達するかどうかの額だと思います。しかし、実際にリタイアする60歳になって、アーリーリタイア可能な資産額が貯まりました!というのでは意味がないですよね。
そのため、私が考える「インフレへの安全域を取ったアーリーリタイア計画」の実施には、投資による資産増が必要不可欠です。
まずは①1000万円の資産を何とか家計倹約から捻出すること、②それを給与収入のバックアップ下に投資(VTIやSPYなど)で年10%程度で増やすことが重要です。
初期資産1000万円、毎年50万円の追加投資、年10%の利回りであれば、15年ほどあれば、手取り200-300万円で生活する場合の初期投資額 6000万円に到達することが可能です。
夢破れた代償
徹頭徹尾、安全性を考えた計画をお示ししたのは、日本社会では一旦退職しキャリアを外れた場合に再挑戦する道はほぼなく、引き返すことが現実的に困難なためです。そのため、本シリーズでは安全に安全を重ねたアーリーリタイア法を提案させてもらいました。いかがだったでしょうか。
最後にインフレにかかり思い出す話が有ります。
一昔前に流行した、老後のアジア移住に関してです。
流行に乗って移住した当初は、移住者の目論見通りに日本とアジアの物価の差により悠々自適な生活を遅れていたものの、数年後には急激な物価のインフレにより、当初の目論見は外れ、年金で生活費を賄うことが困難となり、リタイアリッチのつもりがリタイアプアになってしまったという話です。
どこの国であっても、超長期においてはインフレを考慮した資産運用を行わなければ悲惨な将来が待っている可能性が高いのです。
資産を食い荒らすこのインフレという難敵を、是非考慮した上で、目標とする生活を考えていただければと思います。
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