嵐の向こうに差す光、小売関連銘柄への朗報






10月10日、ウォルマートは、来年度の米国での電子商取引の売上高が40%増となる見込みを示しました。更に、以前から進めていた食料品のオンライン注文の受け取りを扱う店舗数を1000店舗増やし、現在の2倍とする計画を発表しました。


これにより来年度、全体の売上高は3%以上増加、EPSは5%前後伸びる見込みと発表しています。


巨人同士の戦い


米国において、Eコマースの巨人、アマゾンの売上シェア増による、従来型店舗の売上減少は小売業界の頭痛のタネです。


ホールフーズを買収したアマゾンが、どの程度まで実店舗での売上も拡大させるかは未だ見通せず、従来型の小売業界の株価を抑える暗雲が漂っています。


米国の小売業界全体で9%のシェアを持つウォルマートにとってもそれは同様で、同社の営業利益もここ10年間、ほぼ横這いで推移しています。


その打開のため、ウォルマートは電子商取引のシェア獲得に向けて、近年、前述のジェット・コムの買収を行い、更にウォルマート・ピックアップ・ディスカウントのサービスを4月から開始し、電子商取引のてこ入れを図っています。


これはウォルマートのサイトで注文した商品を、実店舗で受け取ると、重さ次第で数%の値引きをしてくれるというサービスです。


また留守宅の冷蔵庫への配送実験なども同社は開始しています。


こういったサービスを支える米国人口の90%以内で10km以内をカバーしている圧倒的な店舗網、そしてAmazonの5000万点の商品数に唯一匹敵しうる規模によって、同社は市場からAmazonへの対抗馬としての期待を受けています。


戦いの今


同社は電子商取引高の詳細を公表していないものの、Barron's(10月10日付)によると、昨年のジェット・コムの買収以前は売上総額の3%程度と見られていました。それが、ジェット・コムの買収後、前四半期では、電子商取引の売上高が前年同期比60%増となったと発表しています。


また、既存店売上高は12四半期連続で増加しており、オンラインのみならず、実店舗も最近のアマゾン・ショックに対し健闘しています。




そういった実績を受けて、株価は2015年の安値から見て、次第と持ち直し傾向にあります。


シアーズという会社の思い出


さて、アマゾンとウォルマートに代表される実店舗業者の戦いの行く末が、いつどのような形で終息するかは、私には分かりません。


今後、アマゾンが企業買収の積み重ねにより、リアル店舗でも存在感を大きく増して進出していくのか、あるいはウォルマートがリアル店舗の優位性をもってアマゾンを抑えるのか、あるいは両社がオンラインとリアルで住み分けるのか、その未来は分かりません。


しかし、安く仕入れて安く売ることこそが小売の本質であり、また勝者が薄利多売による利益の果実を総取りするのが、小売業界です。そのため最終的に、効率的に経営を続け、最も規模が大きくなった企業が小売業界で覇を唱える可能性が高いでしょうね。


生鮮食品や生活必需品において、生活圏にある実店舗は必ず必要ですので、ウォルマートの優位性を強調する人もいます。しかし私が思い出すのは、かつて1980年代に全米で小売りの売上一位だったシアーズという百貨店です。ウォルマートによって瞬く間にシェアを奪われ、今や、全店閉鎖の憂き目を見た同企業は、より安く、より近いところでサービスを提供する企業が出現した場合には、直ぐに転落に至る小売業界の実情を表していると思います。


恐らくは現在の規模からいってウォルマートないしアマゾンが小売りを制するのでしょうが、どちらが必ず安心とは言い切れませんし、私は分からないものには投資しないスタンスを取ります。


どちらが勝っても良いという選択


私見を申しますと、私は小売業者のいずれが勝ったとしても、その商品陳列棚で必ず売られる商品に投資することを望みます。


今は、アマゾン・ショックによる小売店の不振、在庫整理により、軒並み関連した銘柄も業績が低迷し売りに晒されていますが、私はこれらの銘柄の内のいくつか、特に強固なブランド力を誇る銘柄は一過性の理由によるバーゲン・セールとなる公算が大きいと考えています。


なお、私が投資しているのは、100年以上続く下着ブランドの老舗のヘインズ・ブランド、そして第二次世界大戦前からスパム缶を始めとした精肉業を行っているホーメル・フーズです。


そして、ウォルマートの不振が底を打ちつつあるという知らせは、こういった銘柄にとってもやがて来る小売の業績改善を経て、嵐の後に差す光になりうるのではないか、私はそう思うのです。


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