金融セクター連動ETFの投資判断(1) 利上げに向け金融セクターを丸ごと買うという選択





米国市場の好況が続いています。S&P 500指数は日々最高値を更新し続け、その天井は未だ見えません。


それを受けてFRBは市場のバブルを懸念し、次第と政策金利を引き上げつつあります。


一般的に利上げは景気全般に対する冷や水となります。利上げにより、資金調達コストが上昇し、設備投資が抑制されることに加えて、個人の消費意欲も衰えるためです。


このことを、ウォーレン・バフェットは「利上げは株価に対する重力のようなものだ」と評しました。


今後、中長期的に米国株全般で利上げによって、株価の上値が抑えられることが予想されます。


それではこの局面で、バリュー投資家はどのような動きをとるべきか、今回はここに関する私見をお伝えします。


利上げ局面の投資


利上げ局面での投資を成功させるポイントとして、下記の2つを考えます。


(1) 利上げによる利益減を補いうる優良企業へ投資する

(2) 利上げにより利益を得る企業に投資する


まず(1)を考えましょう。


バリュー投資家としては、私は常に割安ないし適正な価格の優良銘柄を探し続けています。しかし、以前から私は3ヶ月毎にS&P 500指数の全銘柄をスクリーニングしていますが、現在の高値相場では残念ながら十分な安全域を確保できる新たな割安銘柄はほぼ枯渇してきているように感じます。


グロース株であれば高い成長率を維持しうる銘柄はいくつかありますが(Googleなどを考えます)、これらは支払う価格とその価値で釣り合いが取れず、バリュー投資家である私の投資範囲の対象外です。




金融セクターへの投資


それでは、(2) 利上げにより業績改善を来す企業に投資する、を考えていきましょう。


利上げにより恩恵を受けるセクターは、商業銀行や保険企業を始めとする金融セクターになります。では、金融セクターの過去の業績を見ていきましょう。


※Yahoo financeより引用。


金融セクターは、リーマン・ショック直後に比べ、格段の業績改善を認めているものの、その株価はセクター全体としては2007年の水準にようやく到達した程度であり、S&P 500指数を大幅に依然アンダーパフォームしています(上図はそれぞれの指数に連動するETF、VFH及びSPYで代用しています)。


2004年から見ると、金融セクターとS&P 500指数のパフォーマンスは +34.8% vs. +126.5%と圧倒的な差を付けられているのです


これは金融銘柄全般のリーマンショックによる不良債権などでの業績低迷、そしてそれに続く低金利持続による業績低迷が原因です。


それでは金融セクターは万年の「負け組」セクターなのでしょうか?


金融セクターの勝ち負けは金利次第


1957 - 2003年にかけてS&P 500指数の年リターンは10.85%、金融セクターは10.58%とほぼ同等であったことが報告されています


長期的に見れば、米国の経済規模の発展に応じて、同等の成長を遂げてきた訳ですね。


過去の成果から未来を断定することは出来ませんが、2004年以降の前述したデータは、リーマン・ショックとそれに続く低金利政策による、特殊な状態であった可能性が高いと私は考えています


従って、金融セクターは、今後、金利の改善及び米国経済の成長とともにS&P 500指数のパフォーマンスと同等の水準に標準回帰する傾向となる可能性が高いと思います


なお、金融セクター全体のバリュエーションは、PER15.9、PBR1.36となっており、市場平均と比べ指標面でも現状割安感があります。


金融銘柄の問題点


ウォーレン・バフェットもこういった状態を見越しているのでしょう。近年、バークシャーも金融銘柄を選好し、買い増しを続けています。


私も金融銘柄を是非とも大きく買い増したいところですが、ここで問題があります。


金融銘柄、特に商業銀行や投資銀行の決算報告書は大変に難解であり、その全てを読解し把握するのは、多くの方にとって困難ではないかということです。私は日本の銀行であっても決算報告書を完全に理解するのは困難ですし、以前、上場企業を担当されている公認会計士の方とお話する機会が有りましたが、専門家でもここには得手不得手があるとのことでした。


そのため、こういった面で苦手意識が無く、十分にその銘柄のリスクを把握できる方は良いと思いますが、私自身はよく自身が理解するクレジットカード関連の銘柄以外では、金融銘柄を個別に購入することはありません。


セクター全体を買う選択


次点の選択としては、個別株のリスクを避けるために、セクター全体を購入するということが挙げられると思います。


先の図を見返してみますと、リーマン・ショックの際に金融セクター全体は75%という暴落を来しています。また実際いくつかの金融機関は業績不振に耐えられず破綻しています。


セクター全体として、大きなレバレッジを用いて運用を行う性質がありますので、どうしても景気循環によるボラティリティの大きさや、個別株の破綻リスクが残るのがこのセクターになります。


決算報告書を熟読しなければ、破綻による永久的な資本喪失のリスクが付きまとうため、個別株には投資は不可能です。しかしセクター全体の投資であれば、破綻リスクはありません(もちろん状況を見誤ればリターン長期低迷のリスクはあります)。


私自身はこの度、金融セクターに連動したETF、VFHへの投資を開始しました。個別株の投資は割安銘柄が少なくなってきたこと、そして現在の利上げ状況を考えると、S&P 500のアウトパフォームを維持するためには金融銘柄のポートフォリオへの組み込みが望ましい故です。


それでは次回は、金融セクターに連動するETF同士の比較に関してお伝えしていこうと思います。




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