シーゲル投資の問題点(4) シーゲル理論と現実の違い





前回はシーゲル投資の問題点をお伝えしてきました。


シーゲル投資は多数の問題点を内包しつつも、その高配当戦略は恐らくは低PER戦略と同様に有効であろうこと、そして高配当は優れた企業を選別する一つのパラメータとなると思われることをお伝えしてきました。


今回は実際に、博士の10種戦略を具体的な米国株の銘柄で検証していきたいと思います。




高配当ダウ10種


まずはダウ10種を選別してみましょう。米国株スクリーナーを用いてダウ平均30種の中から最も配当率が高い銘柄を選別してみます。以下がその結果です(11月10日時点)。


シスコ・システムズ 配当3.36%
シェブロン   配当3.7%
ゼネラル・エレクトリック   配当4.77%
IBM  配当3.96%
コカ・コーラ   配当3.2%
メルク  配当3.32%
ファイザー  配当3.62%
P&G   配当3.15%
ベライゾン  配当5.19%
エクソン・モービル  配当3.69%


競争が激しい業界に属する銘柄や、近年伸び悩みが目立つ銘柄が並びましたね。配当は高いものの、それでも一般的に不人気と言って差し支えない銘柄も多数含まれているかと思います。


さて10種戦略を行う際のポイントは、主観を排した機械的なこれらの銘柄の購入にあります。例えどんなにイマイチと思われる銘柄でも、10種戦略の利益の源泉が、この不人気というリスクをとることによる高配当・高リターンであるため、主観を排するということが非常に重要です。


シーゲル投資による、シーゲル長者とでもいうべき成功者が出てこないもう一つの原因はここにあると考えます。つまり机上と異なり、こういった完全に感情を排した機械的な購入を行うのは人間には行い難いという現実があるためです。


ダウの中でも、シェールオイルの台頭を見てエクソン・モービルではなくアップルを購入しようとつい思ってしまったり、炭酸飲料離れが進んでいて将来が暗いかもしれないコカ・コーラの代わりにホーム・デポを購入しようといった雑念を、一切排除することが万人に出来るでしょうか。


更にバリュー投資の常として、安値銘柄の低迷は2-3年、場合によっては更なる長期に渡りますので、リターンを挙げ続ける周囲とは対照的に、自身が自信をもって保有できないこういった米国株銘柄を買い増し続ける選択を取ることは、非常に困難だろうと思うのです。


高配当 S&P 500 10種


それでは次はS&P 500 10種を見てみましょう。


センチュリーリンク 配当13.3%
フロンティア・コミュニケーションズ  配当30.15%
アイロン・マウンテン 配当5.76%
ナビエント・コーポレーション 配当5.31%
ONEOK  配当5.61%
SCANA  配当5.67%
コールズ・コーポレーション 配当5.39%
メイシーズ  配当8.59%
AT&T  配当5.86%
ベライゾン 配当5.19%


あまり耳慣れない米国株の銘柄も含まれていますね。これらの銘柄の中には低い利益率や、赤字、厳しい競争といった悪材料が積み重なった「おぞましい」銘柄も複数あり、かつ先述のダウ10種よりも小型銘柄も多いですので、すべてを機械的に保有し続けるというのは、より心理的抵抗が強いのではないかと思います。


そういった意味では多少リターンは劣ると思いますが、ダウ10種の方が心理的に行いやすいかも知れませんね。


なお、S&P 500でこの戦略を実際用いる場合は30銘柄程度に分散した方が、粉飾決算など思いがけない事故の影響を減じ、より確率論的に安全に投資を行いうるかと個人的に思います。


私の考え


シーゲル投資は鋼の精神力と、不屈の忍耐力があれば恐らく成功する確率が高い投資法だろうとは思います。


しかし、こういった不人気銘柄を毎年選んで買い替え続ける、ないし機械的に保有し続けるという心理的抵抗感に加えて、リターンを得るまでに数年間を要すことも多いバリュー投資の特性が加わり、シーゲル理論がいわば絵にかいた餅となっていること、これがシーゲル理論どおりの投資で成功したシーゲル長者が出現してこない理由なのでしょう。


実際我々がシーゲル理論を用いるに当たって重要なことは、「10種」原法に代表される同理論をそのままを用いるのではなく、高配当を一つの基準にして自身が思うバリュー銘柄選別に役立てること、そして自身で選んだ銘柄を逆境に耐え保有し続けることではないか、そう思います。




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2 件のコメント :

匿名 さんのコメント...
小塚 崇史 さんのコメント...