
前回は米国株式市場において、VTI vs. ダウ平均 vs. S&P500の長期リターン比較では意外にもダウ平均が善戦し、S&P 500をアウトパフォームしていることをお伝えしました。
今回はこれらのETFにおいて、このリターンの違いが生じるに至った理由を考えていきます。
それぞれの指数を構成するもの
ダウ平均(DIA)
ダウ平均はダウ・ジョーンズ社が1896年に開発した指数です(現在はS&PグローバルとCMEグループに売却されています)。
同社が選んだ優良企業30社の株価から、株価単純平均(単純な平均)で算出する指数になります。これはダウ平均が開始された当時には計算機がまだ無く、紙とペンの計算に便利であったためこの方法が採用されています。
通常、同指数はS&P500指数の時価総額の25-30%を占めています。
そして企業選別の特徴は下記です。
・30銘柄の選択基準に明確なガイドラインは無く、採用担当の主観による
・誰もが知る成熟した超大型銘柄が主に選択される
・30銘柄の単純な割り算で数値が決まる性質から、指数への数値の寄与度が高すぎる、高い株価の銘柄は採用出来ない(例えば現在のGoogle, Amazonなどの値がさ株)
・公益事業会社・不動産銘柄は除外される
S&P 500(SPY, VOO, IVV)
S&P 500はStandard & Poor'sが開発し1957年から運用している指数です。NYSEとNASDAQから、NYSEと各セクターの銘柄数比率が同じになるよう計500銘柄を選別し、株価を時価総額で加重平均し算出する指数になります。
米国株式市場の時価総額の80%を同指数が占めています。ダウ平均が25-30%でしたから母集団としてダウ平均よりも格段に大きいですね。
また企業選別の特徴は下記です。
・50億ドルを上回る時価総額
・月の売買高が発行株式の30%以上の高い流動性
・発行株式の50%以上が浮動株
・4四半期連続の黒字
2つの指数の違い
それではこういった選別方法から生じる、2つの指数の偏りを見ていきましょう。
セクターの偏り

セクターの違いでは、大きく目を引くのがダウ平均の工業銘柄の多さですね。十分に成熟した大企業という選択方法から、オールドエコノミーの工業銘柄が多くなるのでしょう。
ここから分かることは、メインプレイヤーの移り変わりが激しくかつ値がさ株となりやすいテクノロジー株よりも、オールドエコノミーの工業株が、ダウ平均の誰もが知る安定した超大型企業という条件を満たしやすいということでしょうね。
また、(1)工業・小売・金融といったオールドセクターがダウでは多くを占め、(2)テクノロジー・ヘルスケア・不動産・生活必需品・公共事業がS&P500に多いという結果になっています。
価格の偏り
それでは各々の指数のPERを経年で見てみましょう。

20年分の実績PERを私が過去データよりプロットして作図しました。ちなみにこういう作業をブログを書く合間や本業の合間に行っていますので、当ブログの更新はどうしても2-3日に一度が限度です。ご容赦下さい (;´・ω・)
さてざっと図全体を見渡すと、ほとんど常時、S&P500がダウとVTIよりもPERが高そうですね。
平均を取ると、S&P 500 vs. ダウ平均 = 22.1倍 vs. 18.0倍、と過去20年に渡りS&P 500が割高です。
また2014年から2017年では、S&P 500指数がVTI・ダウ平均のいずれよりも割高なのです。
※注:
なお、上記の数値は2002年及び2009年のS&P 500のPERの高騰(EPSが著減する景気後退期に見られる現象)を外れ値として除外した平均値です。
また、VTIのPERはメジャー指数に比べて資料が非常に少なく2013年度からしか分かりませんでした。どなたか資料をお持ちでしたら教えて頂ければ幸いです。
資本効率 (ROE) の偏り

ではダウ平均とS&P500のROEを比較するとどうでしょう? 上図も同じく私が過去データをプロットして作成しました。こちらの図ではダウ平均 vs. S&P 500 = 16.6% vs. 14.7%となっており、資本効率の点からもダウ平均が勝っている印象ですね。
なお2002年や2007年前後といった不況時にダウ平均が大きくROEを落としているのは、重工業が多くを占めるダウ平均の特徴を表している可能性があると思います。
そして逆に好況時には、ダウ平均のROEがS&P 500を長期に渡り上回り続けているのです。
今回のまとめ
今回の主なポイントをまとめますと、(1)ダウ平均は誰もが知る成熟した超大型銘柄が選別されること、(2)ダウ平均は実質的に値がさ株が選別出来ないこと、(3)S&P 500指数にはテクノロジー、ダウ平均には重工業銘柄が多い傾向にあること、(4)そして平均PER・ROEから見ると資本効率性と価格の水準からして、概ねS&P 500が割高であることになります。
この特徴はというと…、もう皆さんお気付きですね。ダウ平均は安定した超大型のオールドエコノミー銘柄によるバリュー志向、S&P 500はテクノロジーなどに比重を置いたグロース志向と言い換えることもできるのです。
次回は引き続き、この事象を詳しく考察します。また米国株式市場において、それぞれの指数を私が実際にどう使い分けているのかも、私見をお伝えしていこうと思います。
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