調節、そして暴落する市場への投資判断





今回の下落相場で読者の方から、急な下落にびっくりしている、どのように対応するのが良いだろうかと、ご相談を頂きました。


最近投資を開始された方も中には多く居られ、「史上最高の下落幅」「この下落が市場の転換点か?」「ブラックマンデーとの近似点が多くある」などといった、強い言葉が新聞の紙面をにぎわせているものですから、価格下落で夜も気になってしかたがないとのお気持ちは分かります。


そこで今回はこの下落相場にかかる私の見解と、当ブログの戦略を一つお伝えしていきたいと思います。






今回のアメリカ株下落の原因


今回の下落の理由の第一は、過熱し過ぎていた米国市場にあります。


年初から1月中旬にかけてS&P 500指数は6.6%もの高値を付け、本来は1年間で得られるほどの将来リターンを先取りする形で高値相場が持続していました。


2017年と合わせて考えると、1年少しで27%の上昇、ダウ平均で言うと20000から26000ポイントへの一気の上昇を認めたのですから、ここで一つ調整するのは実に健全な現象だと思います。


他にも各統計指標の好調さから、インフレ期待による米国中長期債の利回り上昇が株価への懸念となったこと、またFRB新体制の方針が未だ見えず、利上げがどの程度のペースでなされるのか、市場が嫌う不透明さがこの相場を呼んだ点が原因として挙げられます。


市場が調整を示すには機が熟しており、パウエル新議長に交代するタイミングが実に都合が良かった、これが今回の調整にかかる私の見解です。


それでは今回の調整はどの程度で終わりを見るのでしょうか? 市場の未来を正確に当てるのは不可能ですから、当たるも八卦、当たらぬも八卦で今回は予想してみましょう。


米国株式市場を規定するもの


さて、その前に一つ重要な質問です。


株式市場の価格を規定するものは何でしょうか?


今後予想されるインフレ水準? 紛争や政治リスク? 持続するイノベーション? さまざまな要因がありますよね。


ですが敢えて一つ、私が選べと言われた場合に答えるのは金利(特に短期金利)です。というのは株式の価格と金利の間には、切っても切れない重要な関係があるからです。


株式利回りと債券利回り


株式に我々が投資するのは、優れた利回りを期待するからですよね。そしてこの株式利回りのポイントとして、株式の利回りは国債金利、特に短期金利を原則的に上回る必要があります。


ポイント:
株式利回り > 短期金利(米国短期債の利回り)


これはリスクを取る必要がある株式の利回りが、無リスク資産の短期債金利よりも低いとなると、そもそも株式に投資を行う意味自体が無いためです。


現在の株式利回りと債券利回り


では、この株式と債券利回りの歴史的関係を見ていきましょう。


株式において期待利回りを表す指標としてPERの逆数(1/PER)が用いられます。


PERとは、何年先までの利益を株式に期待するかという指標ですから、一般的にPERの逆数(1/PER)は期待利回りと言い換えられるのです。





上図はS&P 500の期待利回りと短期金利(FF金利)の関係を、S&P 500が開設されからの50年間で比較したものです(過去データから私が作成しました)。


この図を見ていくと、一つ面白いことに気が付きます。


というのは株式利回りと短期債金利が歪みを生じたとき、つまり本来あるべき(株式利回り > 短期債金利)から(株式利回り < 短期債金利)となったときに一致してある現象が見られているのです。


上図で(株式利回り < 短期債金利)となっている期間を見ていくと、74年、80年、87年、97年、2001年、最後に2007年です。


この年になにがあったのでしょう?


それは、ニフティ・フィフティ、オイルショック、ブラックマンデー、ITバブル、リーマンショックと著名なバブルが揃って崩壊した時期なのです。


市場の熱狂の果てに


この現象は考えてみれば当たり前のことです。


いつの世のバブルも最初は、市場の将来に夢を抱くだけの色々なキッカケが有ります。素晴らしい新テクノロジー、オイルショックの終結、長い冷戦の終結、低金利 etc.といったものです。しかし人々が将来への情熱に駆り立てられると、やがてそれが過熱し始めます。


まずバブル初期の間は、株式の利回りは国債のそれを明らかに上回るくらいの健全なものです。ですが時が経て市場平均PERが15 → 20 →25倍と上昇していくと、その様相は異なってきます。


興奮が興奮を呼んで、次第とあらゆる人々が市場に参加するようになり、最後にわずかな期間待てば得られる短期金利よりも低い、不自然に低い利回りを株式がつけたその時に、株式バブルは自己矛盾を生じ、いつの世も終わりを告げてきたわけです。


今回の相場と投資判断


それでは、翻って今のバリュエーションを見てみましょう。


FF金利:1.5%

1/PER:4.0%


まだまだ歴史的には十分な低金利ということが分かりますね。


ここから私が考える今後のシナリオは以下です。


恐らくしばらくは市場は調節するでしょう。上昇や下落相場を繰り返し、価格の2番底、3番底を試し、数か月間や場合によっては1年位、レンジ相場になる可能性もあり得ると思います。


しかし、暫くして悪材料が出きってしまい、ほとぼりが冷めてくると、やがて参加者たちが気付くのです。


「わずか1%台の利回りの短期国債、そして10年持っていても利回りが知れている中長期債に資産を置いておくよりも、株式の方が今のところ利回りがいいんじゃないか?」と。


そして最初は少しづつ恐れるように、やがて大きく大胆に上値を追う展開がまた始まることになる、とこれが私の考える今後の展開であり、かつ今まで繰り返してきたバブルのパターンです。


但し今回はここに味付けを加えるプレイヤーがいることに注意を要します。


それは財政出動や減税で、加熱した相場へ油を注ぎ続けるがごときトランプ大統領、そして今後の方針が未だ見えぬパウエル新議長です。


トランプは、彼の政権運営そのものが市場への財政刺激策に依存しているため、どうあってもイケイケの体制を貫くでしょうが、パウエル議長がどう出るか、つまりタカ派として利上げを粛々と進めるか、逆に市場に気を使って緩和的スタンスを維持するかで今回の調節相場の脱出速度、そしてバブルの実り具合の速さが異なってくるものと予想します。


後は中国発のバブル崩壊の懸念や、北朝鮮リスクの暴発、ロシアゲート事件など、未来にはさまざまな変数が関与しますので、正確な時期の予想が困難なのはもちろんのことですが、十分な低金利が未だ持続し、この下で株式を代替する投資先がない現実が続いているというシンプルな理由から、私は今回のイベントは調節で終わる可能性が高いだろうと考えています。


私の考え


という訳で、私はあまり深刻に今回のことは考えていません。


まだ10%もない位の下げ幅ですから、寝転がって新聞の安売りチラシを見るように、この際リラックスしてバリューが出てきた銘柄の品定め行うスタンスで良いのではないかなと思いつつ過ごしています。


そして、下落してなおかなりの高値相場が続き、バリューとしては買いに入りたくなる個別銘柄はあまり存在しないのが私の見立てですが、丁度決算シーズンに入っているタイミング上、個別株においては悪材料と市場心理がかみ合ったときにパニック売りを生じうる、サプライズの楽しみはありそうに思います。


ですから、目星を付けた銘柄の価格墜落が起こってくれればと思いつつ、楽しみに待っています。


・・・


えっ? もし見込みが外れて暴落相場になったら?


その時は、もっと面白い買い物が出来ることになりますね!


今の低金利環境と良好な米国経済というファンダメンタルズ下で暴落が起こってくれれば、暴落は一過性に過ぎる可能性がとても高いですから、その際はシケモクを大量に仕込むよいチャンスになるだろうと思っています。


そしてもし深刻な暴落となれば、最悪の場合はパウエル新議長が「利上げやーめた」と言ってしまえば、問題解決ということになるでしょう。


私はボラティリティこそ市場の華だと思っていますし、実際、私の保有するシケモク銘柄各種は保有期間の大半が含み損だったりしますから(1-2年位赤字続きということは良くあります)、ボラティリティを前提として戦略を立てるようにしています。


読者の皆様、特に投資の初心者の方におかれては、10%・20%・30%の下落でどう対応するか、或いは速やかに株価が戻し上値を追い始めた場合にどうするか、レンジ相場ではどうするか等々、こういった荒れ相場では戦略を予め立ててかかられるのが肝要ではないか、私はそう思っています。



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