ETFの本質的価値を知る(1) ETFに本質的価値が必要なワケ





今回はETF投資における、その本質的価値を考えていこうと思います。




ETF投資の本質的価値


ETFで本質価値が話題にならない理由


今回のタイトルを見て、ETFの本質的価値? 何だそりゃ? と思った方も居られるのではないでしょうか。


バリュー著名投資家がETFに投資することは殆どありませんので、こういった考え自体、著明投資家から出てくることがあまり無いように思います。


例えばS&P 500に連動するETFをバフェット・パブライ・アインホーンが買い始めたぞ!となると、彼らのファンドは解約が相次ぎかねないと思います。


バリュー投資のために資金を投じてきた顧客にとっては、そんなことをするなら中間マージンをファンドに支払うのは馬鹿らしいと考えるのが当然ですし、解約して自分でETFを買えば良いとなりますからね。


しかしながら、どんな資産クラスを購入するにせよ、重要になるのがこの本質的価値という考え方だと私は思います。


余談ですが、著名投資家が内心ETF投資をしたいとき、例えば今のようにバリュー投資家にとっての辛い市況なもののS&P 500をアンダーパフォームするのを避けたいときには、個別銘柄をS&P 500に類似したセクター比率で分散投資し、こっそりETFに類似したリターンを目指すようにする、デフォルト(退避的)取引というものがあります。


著名投資家がその理念とかけ離れた銘柄を少額ずつ購入しているときには、こういった取引手法にも注意が必要ですのでご留意下さい。


ETF購入に本質的価値が必要な理由


様々な本を見ていると、株式の長期リターンは債券を上回るため、景気循環のどのサイクルで購入しても確実に儲かる! ドルコスト平均法で買いさえすれば良い! と推奨している本が多いように思います。


確かに理論的にはそうだと思いますし、実際に利益も出るでしょう。ですが話を聞いていると、まるで市場平均ETFは投資における万能薬のような印象です。


そして当ブログのETF投資にかかる見解は、これとはちょっと異なります。



というのは、我々が実際に資産形成が可能な時間は何年だろうか? というリアルワールドの問題がここでは重要だと考えるのです。


投資に取り組むのは恐らく30歳台前半から本格的に行う方が主で、資産形成が可能な時間は20年と少しという方が多いと思います。


ここで仮に、あなたがリーマンショックの相場の頂点で株式購入を開始するとしましょう。


その場合、直ぐに相場が下落を開始することになりますね。そして、S&P 500がその価格下落を取り戻すまで2007-2013年までの5年間を要します。ITバブルの場合はこの時間は7年です。


本当にあなたはこの相場に耐えることが出来るでしょうか? ひたすら毎日下げ続け、悪材料がメディアにも踊り続ける中、40歳・50歳と重ねる年齢を前に平然とドルコスト平均法を持続することが可能でしょうか?


ETFを保有し続けること、それだけのことであっても、保有する資産の価値を知り適正な価格で購入する場合とそうでない場合では、その難易度が全く異なるものだろうと私は思うのです。


リーマンの思い出


私自身のリーマンの記憶から言いますと、50%の資産が吹き飛び(米国株なら為替も含め60-70%でしょう)、しかも5年以上に渡って続く相場の暴風に対して、この期間ドルコスト平均法を平然と続けられた方はほとんどいません。


上下動しつつ下落する相場に疲れ、また長い時間を無駄に思える投資に費やすことを恐れ、多くは底値に近い額で「損切り」してしまいました。


最近の暴落の多くはFRBの適切な金融政策や、米国の安定した政治・経済環境によって短期間に済んでいますが、過去を見返すと大恐慌や1970年代の「株式の死」と言われた時代など株式が長期低迷した時代はままあります。


暴落後の相場では、次から次に悪材料が噴出し、「大恐慌との類似点がある」「世界全体の債務は〇〇京円に達する」「次は〇〇銀行・ファンドの債務が破綻見込み」「株式低迷は10年に及ぶ見込み」「次は新興国の〇〇がデフォルトの可能性」など真偽不明の情報が多々メディアにも踊ります。


数年間それが続き、過大なポジションを取り、且つ高PERの銘柄・ETFを購入した場合はその精神的負荷に耐えられず、頑固な投資家でも多くは株式を手放してしまったのです。


ここで皆を諦めさせたのは価格の下落のみならず、いつまで続くか先が見えない恐怖と絶望だったのです。


ですから、私自身は単に過去に利益が常に出てきたから、という根拠だけでETF投資を続けるのは無理ですし、自身の貴重な時間を使う気にはなりません。


本質価値よりも安く購入でき、高い確率で中長期的に(3年程度で)期待値がプラスであるという心の拠り所がここでは必要と思うのです。


高値でETFを売り抜けるという考え


では価格が下落する前に、ETFをさっさと売り抜けるという考えはどうでしょうか?


最近、投資を始めた方からこう質問がありました。


「ダウの長期チャートを見ていると、下がったときに買って、上がりきった所で売れば儲かるに決まってると思います。何故そうしないのですか?」


この質問は実に深い内容を含んでいるように思います。というのはいわゆるモメンタム投資、グロース投資、テクニカル投資の考え方を突き詰めると、この考えに行き着くからです。




ここで上図の、とある資産クラスのチャートを見てみましょう。


ここでは、この資産が2017年から急激に上昇しており、一時期は価格が数倍にも膨れ上がるほどの強い価格上昇を見せていますね。


そしてこの際、価格が上がる毎にその人気も指数関数的に増加し、取引量も素晴らしい伸びを見せました。


また、この資産を購入した方の多くは、これは未来を変える力がある! 今までの既存の価値を変えるものだ! と未来に向けた強い希望的観測を投資根拠としていました。


さてその後、この資産は最も多くの投資家が購入して天井を付けた直後に、暴落を来しました。多くの方は含み損を抱えることとなり、この資産がどうなるかその今後は杳として知れません。



・・・



お気づきの方も多いと思いますが、先の資産とはビットコインです。


本質的にこの熱狂と株式相場の熱狂は同じものです。PER3桁を付けたアマゾン・ネットフリックスに投資家が寄せる熱い思いと、このビットコインは同種のものと私は思います。


モメンタム取引・レバレッジで多くの利益を得た後に、実際に高値で売り抜けるということは極めて困難です。


というのは多くの恐慌が最高の景気のときに崩壊する性質を持ち、天井を知るサインに乏しいこと、そして成功体験を忘れられないヒトの心情が売りをより難しくするためです。


実際に先のビットコインを本当に高値で売り抜けられた人がどれ位いたでしょうか? そして売り抜けたとしても、その後の価格下落時に再購入を行わずに、最終的な損失を出さずに済んだ人がどれだけいたでしょうか?


モメンタム投資の結果は、ビットコインの惨状と非常に似ていますし、これを避けるために必要なのが売買の規律であると私は強く感じています。


そして高すぎる市場平均ETFを購入することも、本質的に同じ結果を生みかねないと私は思います。


私の考え


市場平均ETFは、保有していれば必ず利益が出るという宣伝文句が、正論であるが故に、ITバブル・リーマンショックでも多くの投資家を相場からの退場に追い込みました。


※S&P 500の1998年からの長期チャート。


実際に2000年にS&P 500のETFを購入したとすれば、その高値を更新するのには上図の赤線のように、13年間の月日を要したことになります。このように高値回復にかかる時間が10年以上に及ぶことも、株式市場ではちょくちょくみられる出来事です。


バブルの高値を掴んだとしても、超長期的には実体経済の成長により利益をもたらすのが市場ですが、残念ながら人の持つ時間はそんなに長くないという現実がそこにあるのです。


以上から、私はETF投資でも数学的に高い確率で、数年以内に利益を挙げられる見込みが高い、本質的価値以下でのETF取得が望ましいと考えます。


そして引き続き次回は、実際にETFの本質価値の具体例を見ていこうと思います。



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