![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgX7WArhwvNp_pViluLRSk_JbGqc3Twfy1uZKHT-M-hw8w5ZFzJwft3I_X7v1t4wBAxsILoeQCBK9UXRoAVmoPSGSXqTAFA-1Z3QC6_NaGiCRQBHHcA7vg2V7-zL0AIQ0qy2gdL6yHCyB9I/s640/mine-min.jpg)
エルドラドはスペイン語で "黄金の人" を意味し、大航海時代、欧米人から南米にあると信じられていた黄金郷を指します。
実際にはそんな都合の良い話がそうそうあるハズも無く、大航海時代が終わるとこの言葉だけが残ることになった訳ですが、今回私が投資を行った金生産会社は、この名前を冠する現代のカナダ企業になります。
この名前といい、そして一般的に金鉱株と聞くと、いかにも如何わしいような、なんだか危険な雰囲気が漂う気がすると思う人が多いのではないでしょうか?
実際に金鉱株はセクター全体として慢性的に高額の設備投資により赤字に陥りやすい構造上、とびきり高いボラティリティ(50%位の上下はザラです)を持ち、さながらジェットコースター的な株の代名詞です。
本シリーズでは、何故、今回金鉱株に投資を開始することにしたのか、その根拠をお伝えしていこうと思います。興味のある方はご一読いただけましたら幸いです。
※注:
なお、こういった性質の株はグレアム投資の原則通りに、価格が本質的価値への標準回帰を来せば速やかに売却します。保有に関しては、ご自身でもよく年次報告書などを参照頂き、売買の時期を検討頂きますようご注意をお願い致します。
産金業界を取り巻く状況
業界概要
産金会社とは金鉱山の権益を所有し、そこから金を採掘している会社です。
そして産金業界の収益は産出する金価格により大きく左右されます。というのは、一般的に人件費・採掘・探鉱・輸送費・閉山費用などという固定費は金価格に寄らず一定なのです。
そのため、産金会社の利益は、金の採掘コスト(AISC : All-In Sustaining Cost, 上述の鉱山全体のライフサイクルコストを包括した国際統一規格)によりその収益性が大きく左右されます。
そしてこのAISCと、金価格の差が、即ち産金会社の粗利となります。
また産金業界は、扱う商品では差が付かないコモディティであることから、各社の収益性は保有する鉱山の品質(AISC)と、規模による効率化がキモとなります。
以下は2017年度の業界の売上上位の各社、そしてエルドラド・ゴールドの主要データのピックアップになります。
※ ABX:バリック・ゴールド、NEM:ニューモント・マイニング、AU:アングロ・ゴールド・アシャンティ、GG:ゴールドコープ、KGC:キンロス・ゴールド、GFI:ゴールド・フィールズ、OPYGY:ポリウスゴールド、AEM:アグニコ・イーグルマインズ、HMY:ハーモニー・ゴールド、EGO:エルドラド・ゴールド
ここでは売上規模によって利益率が改善し、それにより市場から高く評価されるという、規模による経済がモノを言う、コモディティの構造が透けて見えるかと思います。
そしてエルドラドはというと、実に小規模、且つPBRから見た人気ランキングでも最下位ですね。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiN69rs-COqm9wKQsNLB5JBtz3EkvZElGIz4kFQYW-X9oeXWnWWoncSMXCptrP_mwj3RyoCYTn7n2sWkcY0ChFV_O8w9U77l9FlWFGV6eiJGB-90sKiYEj36JEFNvGERk9e8b8rZDETC2kx/s640/AISC%25E5%2590%2584%25E7%25A4%25BE-min.png)
また採掘コスト(AISC)は各社概ね700-900$/ozとなっており、各社とも近年の金価格の下落に対してのコスト削減により、2013年から次第と漸減し健闘しているのが分かります。
ここではエルドラドは中堅どころというところです。
金の需要と供給
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj4IoZTya2S0fmBcbxX44gepFWywkuMd2oLxep62AzsAXF6hqgBuHSEFFCVq87pqWLVTFISxy_jLykJGUYgCeuwlkEqLmsCSF94TD1cPhUB7wrR1-RzELH6xyy0ewBEYTJez4-HAGJjcw_I/s640/%25E9%2587%2591%25E4%25BE%25A1%25E6%25A0%25BC%25E3%2583%2581%25E3%2583%25A3%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2588-min.png)
近年の金市場は2012年頃までの資源ブーム期に高値を付けましたが、その熱気もひと段落し現在に至ります。
コモディティは、人気が出て価格が上昇を始めると一斉に各社が競って設備投資を行うことで過剰生産に至り、やがて価格が下落を始めるという、需給に沿ったサイクルを持っています。
産金業界でもこの例外に洩れず、資源ブーム期には巨額の設備投資、買収が繰り返されました。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhuEf2Od6er7QyS5Kjzr12hhQaFmw9uXGv6YVAkWgQ56T-fu_CbC87XG-N3SC1hEyi6O0UYSKn8j-WJxQf5ZHIfqMZq5u-YOxfa0WlXiGsiRSQcKgM41a7eD097MdkCx8PZmRZsvyVEjHGT/s640/%25E9%2587%2591%25E9%259C%2580%25E7%25B5%25A6-min.png)
上図は世界の金需給ですが、2012年までのいわばゴールドラッシュとでも言うべきバブル期に一気に金の供給が増加しているのが見て取れます。
その後供給に見合う程に需要が増加し続けることは無く、それに伴い金価格も下落を来し今に至っていることも分かりますね。
ここではバブル崩壊のパターン通り、供給過剰によりバブルは崩壊し、そしてその後も需給のギャップが金価格の頭を押さえ続けている訳です。
そして産金会社においては、生産コストが一定に決まっている以上、金価格がその基準以下になると赤字が累積的に増加し、それが金鉱株のダイナミックな値動きに繋がることになるのです。
そして現在、産金業界は過去のツケを払うべく、雇用・設備投資削減・資産売却などを通じた生産設備・コスト削減により生き残りを図っています。
ここ数年間の企業努力によって徐々にコスト削減は進み、またエネルギー価格の低下も相まって、前述のように産金コストは業界全体で改善傾向にあります。採掘コスト(AISC)で言うと業界平均が850ドル/オンスとなっており、現在の金価格1330ドル/オンスに比べると、業界はバブル崩壊後の打撃から漸く一息つきつつある所にあるのです。
金鉱株の今
さて、昨今の金価格の下落、リーマンショック後のゴールドラッシュ時に増やした負債とそれによる業績低迷によって産金会社の株価は、長らく低いレベルに抑えられています。
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiPL739z6R0Hzt-ncgv6MaoOABlMpWz47Ux0FXGq6sCz488YTlYRHGkPybkYZCDmnQ2K88ZQY3ZzgKfVUvO1HZiL4V3HcS7lV4S88GnjuTMuaRdrNmdaJ3AXOxZveSERBLTqxZM4J5fmH3J/s640/%25E9%2587%2591+vs+%25E9%2587%2591%25E9%2589%25B1ETF+vs+EGO-min.png)
上図では金価格のレベルは安定しつつあるものの、産金セクターは財務・先行きの懸念から、金そのものよりなお不人気であることが分かりますね。
そして、エルドラド・ゴールドはこの中でも格別に不人気なことも分かるかと思います。
それでは次回はこの産金業界で一際輝く不人気の星とでも言える、エルドラドの財務諸表を見つつ、更に考察を深めていきたいと思います。
スポンサーリンク
0 件のコメント :
コメントの投稿・確認
おすすめ記事とスポンサーリンク