今回は2018年8月7日付、ディスカバリーの四半期決算を見ていきます。
結果から先にお伝えしますと、決算の結果としては前四半期よりも総じて良い内容でした。特に私が思うポイントは、本企業のスクリプス合併後の本質的価値が徐々に定まりつつあるよう見えることです。
一方、決算を受けて市場では安値に売られ、当方と市場の判断に乖離が生じたことは大変に興味深いものでした。
それでは見ていきましょう。
ディスカバリー 四半期業績
※Discovery Inc . 2018年 Q2決算より引用。
本四半期の売上は前年比63%増、営業利益は3%増でした。
前四半期の決算と同様に、本四半期の決算も少し読み解くのが難しい内容となっています。というのは本四半期の結果に、(1)この1年以内に買収を行ったスクリプス関連の一時的経費(合併コスト・リストラ費用など)が業績に含まれ、(2)その他にOWNブランド, MTGブランドといった新規に取得したチャンネルが上乗せされていることにあります。
そのため、この影響を除外して決算を見ていく必要があるのですね。
上図赤字のPro Forma(前年比較のための補正営業利益)は、2017年Q1開始時からスクリプス、OWN・MTGチャンネルを保有していたと仮定したときの営業利益です。
このPro Formaを見ていくと、昨年から今年にかけて売上は1%増、営業利益は5%増と増収増益を確保していることが分かりますね。
ここからは少し詳しく、業績を米国内・米国外のセグメント別に見てみましょう。
本四半期の売上は前年比63%増、営業利益は3%増でした。
前四半期の決算と同様に、本四半期の決算も少し読み解くのが難しい内容となっています。というのは本四半期の結果に、(1)この1年以内に買収を行ったスクリプス関連の一時的経費(合併コスト・リストラ費用など)が業績に含まれ、(2)その他にOWNブランド, MTGブランドといった新規に取得したチャンネルが上乗せされていることにあります。
そのため、この影響を除外して決算を見ていく必要があるのですね。
上図赤字のPro Forma(前年比較のための補正営業利益)は、2017年Q1開始時からスクリプス、OWN・MTGチャンネルを保有していたと仮定したときの営業利益です。
このPro Formaを見ていくと、昨年から今年にかけて売上は1%増、営業利益は5%増と増収増益を確保していることが分かりますね。
ここからは少し詳しく、業績を米国内・米国外のセグメント別に見てみましょう。
部門別業績
米国
米国部門はPro Formaベースで(上図赤字)、Distribution(番組配信)、Advertising(広告)ともに売上1%増、更に営業利益も1%増となっています。
ここではディスカバリーのプログラム加入者が5%減少した一方で、営業利益増を達成したとのことです。
これは決算報告によると、(1) アフェリエイトの単価引き上げ、(2) デジタルコンテンツ提供の継続的な収益化によるとのことであり、前四半期と同様に顧客減を補いつつの営業利益増には、従来のケーブルTVだけでないストリーミング配信(HuluやAmazon Prime、AT&T Watch TV、本企業の動画アプリDiscovery Go)による収入がそれなりに存在するものと推測します。
また、本四半期では経営陣にデジタルビジネスの監督としてAmazonの前役員 Peter Faricy(※)が参入しており、経営陣はデジタルプラットフォームへの転換を強く推進する意向です
経営陣はカンファレンスコールで上記のように発言しており、デジタルプラットフォームに向かいつつある戦略は、持っている武器(ドキュメンタリー分野における寡占力)からして、実に妥当なものと思います。
更にスキニー・バンドル(米国で通常の多チャンネルプランが高額なのに対し、視聴できる番組数を減らして安く番組パッケージを提供するTVプラン)へ注力することも、カンファレンスコールで強調しています。
ここで本企業はかつての多チャネル・高額プランというケーブルTVの枠を出て、自らのコンテンツの競争力を武器に勝負する、マルチプラットフォームに対しての配信業者へ変化しつつあるよう私には見えます。
※Amazon Marketplace プラットフォーム構築に携わった人物で、Discovery Goを始めとした本企業のデジタルコンテンツ、また他社とのデジタルの連携に携わる方針とのことです。
前四半期決算では、米国外事業は冬季オリンピックの一時的影響により、決算を読み解くことが困難でした。従って今回から初めてスクリプス合併後の本セグメントの評価が行える訳です。
ここではディスカバリーのプログラム加入者が5%減少した一方で、営業利益増を達成したとのことです。
これは決算報告によると、(1) アフェリエイトの単価引き上げ、(2) デジタルコンテンツ提供の継続的な収益化によるとのことであり、前四半期と同様に顧客減を補いつつの営業利益増には、従来のケーブルTVだけでないストリーミング配信(HuluやAmazon Prime、AT&T Watch TV、本企業の動画アプリDiscovery Go)による収入がそれなりに存在するものと推測します。
また、本四半期では経営陣にデジタルビジネスの監督としてAmazonの前役員 Peter Faricy(※)が参入しており、経営陣はデジタルプラットフォームへの転換を強く推進する意向です
当社の戦略的利点は科学・食品・スポーツなど幅広い分野に渡るコンテンツを、全てのプラットフォーム上で所有する企業ということです。我々はNetflix, Show time, HBO, Starz, Amazon Primeの動向を注視していますし、今後も彼らは成功するでしょう。反面、彼らは消費者にとって非常に似通ったものに見え始めています。ここで何をもって彼らは差別化を行うと思いますか?我々の武器はオリジナリティに富んだコンテンツです。では我々は誰と提携すべきでしょう。それとも自分自身で配信すべきでしょうか。ここではその選択肢をオープンとしておきます。議論を重ねているのです。
経営陣はカンファレンスコールで上記のように発言しており、デジタルプラットフォームに向かいつつある戦略は、持っている武器(ドキュメンタリー分野における寡占力)からして、実に妥当なものと思います。
更にスキニー・バンドル(米国で通常の多チャンネルプランが高額なのに対し、視聴できる番組数を減らして安く番組パッケージを提供するTVプラン)へ注力することも、カンファレンスコールで強調しています。
ここで本企業はかつての多チャネル・高額プランというケーブルTVの枠を出て、自らのコンテンツの競争力を武器に勝負する、マルチプラットフォームに対しての配信業者へ変化しつつあるよう私には見えます。
※Amazon Marketplace プラットフォーム構築に携わった人物で、Discovery Goを始めとした本企業のデジタルコンテンツ、また他社とのデジタルの連携に携わる方針とのことです。
米国外
前四半期決算では、米国外事業は冬季オリンピックの一時的影響により、決算を読み解くことが困難でした。従って今回から初めてスクリプス合併後の本セグメントの評価が行える訳です。
米国外事業はPro Formaベース(上図赤字)で、売上はDistribution (番組配信)6%増、Advertising(広告)2%増、全体の営業利益で14%増と好成績を出しています。
米国外事業は毎四半期毎に利幅のバラツキが大きいため、本四半期だけでははっきりしたことは言い難いのですが、まずは一安心という所です。
カンファレンスコール
電話会議では本年度の通年FCFは前四半期と同様、23億ドルに据え置かれています。
さて前回、2018年 Q1のFCFは1.1億ドルでした。前年同期のディスカバリー+スクリプスのFCF合計が4.8億ドルでしたから(※異なる企業同士のFCFの加算にて参考値)、前四半期はスクリプスとの合併費用、冬季オリンピックによる一時的コスト増が大きく圧し掛かった結果、FCF減少を生じていた訳です。
今回、本四半期 Q2のFCFは5.2億ドル、前年同期のディスカバリー+スクリプスのFCF合計が3.4億ドル(上記同様に参考値)ですから、これは前四半期と比べ素晴らしい伸びを示しています。
つまり、スクリプス合併にかかる費用が徐々に減じ、それによってFCFの伸びが2018年ガイダンス通りに運んでいると思われるのですね。
またスクリプス合併にかかる合併費用として、2018年通年でFCFへの3-4億ドル減の影響があり、Q1-Q2で2.5億ドルが既に用いられたとのことですので、徐々に合併コストの影響は減じてくるものと思われます(なお2019年まで合併費用が持ち越されるかどうかは明らかにしていません)。
また債務に対し、当面実質的に全てのFCFを債務償還に配分予定であるとのことです。
因みに当ブログ、このように決算およびカンファレンスコール、その他SEC Filingにかかる一通りの資料に目を通してから執筆を行っています。ですので時間の関係上、どうしても更新は1-2週間に1回が限度なのです。この点どうぞご容赦下さい (;´・ω・)
本質的価値
晴れゆく霧
ここまでの四半期決算のポイントをまとめます。
・今回初めてスクリプス合併後の全部門の営業益増が明らかになった。
・数年来の従来型サービスの顧客減の中、未だ営業増益を達成し続けている。
・本年もFCFは経営陣のガイダンス通り堅調に推移していると思われる。
今回私から見て視界がクリアになったと思う点は、(1) スクリプス合併後もFCFは堅調に推移していること、(2) FCF成長率が数年前から変化していないことの2つです。
前回までのシリーズでお伝えしましたように、本企業は長年市場からオワコンと判断されつつも、その懸念と裏腹に徐々にFCFを伸ばし続けていました。
具体的に言いますと、ストリーミングの影響が顕著になり業績が伸び悩み始めた2013-2016年の期間で、合併前のディスカバリーが年3.3%、スクリプスが年2.9%のFCF成長率です。
さて、本年のFCFはカンファレンスコールでは、スクリプス合併にかかる一時的費用を除外して考えると26.5億ドルの見込みとのことです。
2017年のディスカバリー+スクリプスのFCF合計は24.7億ドルでした(異なる企業同士のFCF合計にて参考値)。今年は減税により前年度と同じ評価は出来ませんので、税率を調節して考えると(※例年並みの税率30%→カンファレンスコール発表の今年度見込み25%で考察)、26.5億ドルになります。
つまり本年は減税効果を除くと、FCF成長は前年比0%の見込みなのですね。
ではここで、カンファレンスコールに再び視線を移します。Q1, Q2の電話会議で、経営陣は2019年度には合併のシナジー効果が現れ、キャッシュフローが30億ドルに達する見込みとしています(合併前のディスカバリーのFCF 15億ドルと比べて2倍を見込むとのこと)。
もしこれが上手くいくのであれば、2019年度は大きくFCFが伸びることになりますし(2018年比 +13%)、事が上手く運ばなくともまずまずの成長が期待できそうです。
それではこれらを基に本質的価値を計算してみましょう。
本質的価値
マンガーは本質的価値とはその企業から生まれるFCFの総和と定義しました。これを基に本質価値を求めていきます。
まずは本企業が合併によるシナジーや、堅調に業績が引き続き推移することで年3%のFCF成長率を保ち、10年後に株価FCF倍率が10倍であったとします。
これはここ10年間の合併前のディスカバリーとスクリプスの株価FCF倍率のレンジの下限値であり、十分に悲観を織り込んだ数字だと思います。
この場合の得られるFCFの総和は、バフェットの言う年10%の割引率(S&P 500の長期利回りに相当)で割り引いて計算すると、325億ドルになります。
現在の時価総額が183億ドルですから(※)、順当に今のペースで成長を続ければ今後10年で年10%の利回りに加え、更に78%のリターンが得られる計算になります。まずまずですね。
本企業及びスクリプスは逐次企業買収・チャンネル買収を行い成長を加速させてきた経緯があります。
スクリプス買収で負債額が大きくなり、暫く買収は出来ませんので成長率が伸び悩む可能性はあるでしょう。
成長率0%、10年後の株価FCF倍率7倍(現在と同じ水準)で計算すると本質的価値は234億ドル、これは年10%の利回りに加え28%のリターンが得られる計算です。
それでは市場の懸念通り、ストリーミングの逆風により本企業の価値が破壊され、合併の甲斐なく毎年 -5%の成長率、10年後の株価FCF倍率が5倍となる場合はどうでしょう?
この悲惨な場合の本質的価値は160億ドル、残念ながら年10%の利回りの債券に比べて -13%劣後してしまうことになります。
ですが本企業は、ストリーミングに存在を脅かされ始め5-6年が経過してなお利益増を続けていますので、これは現状よりも本企業を大いに悲観的に見たシナリオだろうとは思います。
※本企業の株式数は8月9日時点で7.12億株が存在します。従って時価総額は現在25.65ドル/株 × 7.12億株 = 183億ドルとなります。
私の考え
ここで仮に、3%成長 : 0%成長 : -5%成長 : 破産して価値が0になるシナリオが、30 : 40 : 29 : 1の確率で生じるとします。
ここにはいろいろな考えがあるものと思いますが、この仮定はここ5年間、3%/年成長を続けている実績からして相当に保守的な見積もりかと思います。
この場合の平均的な本質価値は238億ドル、年10%の利回りに加えて平均的に30%のリターンが得られる(安全域がある)投資と考えられるのですね。
そしてベストシナリオとして、上記でお伝えしたように今まで通り3%の成長が続けば、ダブルバガー程度の利回りが見込めるものと思っていますし、" コインの表が出れば勝ち、負けても損失は少ない " コイントスのような賭けかと私は思っています。
最後に
ディスカバリーといい、シケモク株各種といい、先行きが暗く見える企業にばかり資金を振り向ける私の投資法は、今のような局面では賢明でないとみる向きもあるかと思います。
実際に市場が伸長する程に、最近私のポートフォリオも伸び悩みが続きますし、これはどうしようもありません。
これがバリュー投資と言えばそれまでなのですが、投資というものに対してもう一つ、私の経験から思う所があります。
私のリターンの大半は十分に安く買った銘柄を数年間最後まで保有しきったことによるものです。スケベ心を出して流行りの銘柄の決算を狙った取引を行った時や、マクロ経済を先読みして取引を行った時に限って、最終的に損失を出した思い出ばかりなのですね。
また同様に後者のような取引を行い続け、3年・5年と時間が経って景気循環が一巡してなお、相場に立っていた人をあまり私は知りません。
昔ながらの安い堅実な株を最後まで持ち続けること、これに勝る投資は無いと思っていますし、更には株式の先にいる企業の経営陣と、企業が良い企業である限り苦楽を共にすること、結局はこれが企業投資の一番の方法ではないかなと、自分の短い経験の範囲では感じています。
そしてこの投資の原点とも思える方法こそが、とても大きな利を生むということ、このパラドックスが私には大変興味深く思えるのです。
※2018年8月10日 記事を訂正・追記。
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