翔べ! とある投資好きの医師のヘリフライトな日々




フライトドクターという言葉を皆さんご存知でしょうか。


ヘリコプターに乗って短時間で患者のところに向かい、救命処置を行う医師のことです。


コード・ブルーでは、颯爽とフライトスーツを纏って現れるイケメン医師と、それを取り巻く美人達の忙しくも充実した日々が描かれ、こんな環境で働きたいなーとつい思ってしまいます。


でも実は私も、以前九州に勤務していたときにちょっとだけフライトドクターだったのです。


フライトドクターへの道


医者はつらいよ


10年前のことです。勤務していたのは九州の有名な救急病院で、連日ドクターヘリが発着する病院でした。病院の前に連日ヘリが空から飛来し、重症の患者さんが搬送されてきます。


私「すごいなー、フライトドクターってどうやったらなれるんだろ? なってみたいが、さぞかし特殊かつ高度な特訓をしないと無理に違いない。検討もつかんぞ (・ω・)。


などと考えつつ、日々を送っていました。




そんなある日、部長から呼び出しです。


部長「実はフライトドクターの枠が一つ余っていてね。昨今の人手不足で先生にも力を貸してほしい。先生はもちろん飛びたいよね?


私「あ? え!?」


部長「どっちだね?」


私「飛びたくないわけではないですが・・・」


見事に返事を遮って、部長が続けます。


部長「ありがとう!!既に先方に話は通してあるからな!


私「(=゚ω゚) !!!?


こうして、私は見事念願の(?)フライトドクターになりました。えてして現実ってこんなものです


職場環境


数時間後、早速の出動です。ちなみに研修はありません


ヘリにも数種類あるのですが、私が乗っていたのは自衛隊ヘリでした。ドクターヘリは有視界飛行で夜間は飛べないので、そんなときは軍隊仕様の自衛隊ヘリがフライトするのです。


さて、出動要請の直後から救急車を飛ばし、あっという間に自衛隊飛行場に到着です。


自衛隊隊員「お疲れ様です先生! 失礼します!」


隊員のお兄さんに囲まれ、ライフジャケットを着せられます。そしてなんだか最後に首に金属の鎖を巻き付けてきます。


私「これは?」


隊員「識別タグです!墜落した時に判別がつかない状態になることもありますので!


そういえば、部長は「墜落しても保険はおりないよー、というかそんなんカバーする保険あるわけないだろー」と言っていました。「お前独身だったよな」とも言ってました。そういえば、今週から部長のフライトのシフトはなくなっていたような気がします。つまりハメられたようです


フライトドクターのお仕事


そうこうする間に


またたく間に準備を終え、ヘリは飛び立ちます。福岡から長崎の離島まで100kmをわずか25分です。しかし、その乗り心地は恐るべきものです。ローターの轟音が響き、猛烈に前後左右上下に揺れる機内で逃げる場もないです。


私「(*´Д`) オウ゛ェーーー、オウ゛ェーーー、死ぬー、死んでしまうー


自衛隊の隊員達は、明らかに、(こいつマジで役に立つのか?)の目でこちらを見ています。一方、私はひたすら早くつけ、早くつけ、早くつけ、早くつけ、早くついてよぉー、とシンジくんのように心で念じ続けます


隊員「到着です!」


ようやく到着です!倒れこむように機外へ出ます。しかし、そこには既に倒れている患者さんが待っていました。


離島の先生「先生、待っておりました。早速搬送をお願いします。」


私「グハッ (゚Д゚)ノ


まだ復路があるという、残念な事実が私を待っていました


帰路


患者さんは心筋梗塞です。致死率も高い重病ですから、目が離せません。


患者さん「うーん、胸が痛・・・ガクッ・・・・・・」


私「( ゚Д゚)! ヤバい! 心室細動!」


心室細動です。いわゆる心停止ですから、一刻も早く電気ショックをかけねばなりません。しかしここは猛烈に揺れ、かつ暗闇のヘリ内です。


私「3. 2. 1 ショックかけます! グハッ(゚Д゚;)


電気ショックをかけて、跳ね上がった患者さんの蹴りが下腹部を直撃しました。オーマイガ


患者さん「うーん・・・。」


しかしよかった、患者さんは心拍動が再開したようです。早く着いてくれー、と念じつつヘリは飛びます。




ふと目を向けると、飛び行くヘリの眼下にはハウステンボスの灯りです。


季節は夏、花火がつぎつぎと打ち上げられています。ヘリは赤・青・黄色と七色に夏空を彩る花火の上を飛び、街の灯りと相まって、その美しさは息をのむようです。


隊員「先生、花火って上空からが一番きれいなんですよ。今日はお疲れさまでした。」


別れ際に隊員さんがそういっていましたが、確かにそれは忘れられない光景でした。


その後


その後、何度か無理やりヘリに乗せられた挙句、ようやく交代要員がやってきたので、無事(?)フライトドクターはクビになりました。


最後に部長は言っていました。「いやー、おかげで私を含めて救急部の要員はゆっくり休めたよ!


やはりか、貴様ーァ!


それはともかく、今もフライトドクターたちは24時間日本の空を飛び、そんな彼らに日本の僻地医療は守られているのです。フライトドクター達の戦いに乾杯です!


スポンサーリンク



スポンサーリンク


2 件のコメント :

匿名 さんのコメント...
小塚 崇史 さんのコメント...