シケモクの注意事項(1) 誰もシケモク投資をしない理由




最近のシリーズでは私が考えるシケモク投資をお伝えしてきましたが、読まれていかがだったでしょうか?


私は本四半期では最近お伝えしたような銘柄(AER, FOSL)に、計400万円ほど投資を行いました。しかし書いていて思うのですが、恐らく私のような投資スタイルは本邦では稀だろうと思います。


というのも、日本株時代からシケモク銘柄への投資を行っている方は周りにはほぼ皆無であり、オンライン上を見回しても極わずかというのが実情だったのです。そしてこの状態は恐らく今後も変わらないだろうと思います。


何故でしょうか? それはこういった「安い+小型+見晴らしが悪い」銘柄に投資する、シケモク投資の利益のヒミツと大きく関わってくる問題が根本にあるのです。




誰も相手にしない米国株シケモク投資


米国株ブログで良く目にする銘柄と異なり、あまり耳慣れない低い利益率の銘柄ばかりで、特に投資の初心者の方にあっては、"こんな危険な銘柄には投資する気にならないよ" と思われた方も多かったのではないかと思います。


ですがネットネット銘柄に代表されるシケモク投資 = グレアム投資の利益の源泉は皆さんがそう思う心、安定性を求める心の中にあります


即ち皆が本能的に避ける、市場から無視され、投げ売りにあい、踏みつけられた銘柄であるからこそ、多くの投資家の分析からスルーされバリュエーションが本質的価値よりも低く抑えられることになります。


そして価格の下落が著しかったり、規模が小さすぎることによって機関投資家が購入対象に出来ない(出資比率に5%未満などの制限がある場合が多いです)性質が、更なる本質的価値と価格の乖離を生むことになるのです。


なお機関投資家は組織内の「民主的な」システムによって投資を判断することが多いですので、グレアム銘柄のような「危険な銘柄」に投資するのは組織内での同意が得られ難く実際的には大きな困難を伴う、ないし投資不可能な実情があります。


安くなるからには理由がある訳ですし、将来が不透明な銘柄には誰もがこのようにして投資に二の足を踏むことになるのです。


米国株で小型株が良い理由


さらに、小型株への投資がバリュー投資家にとって利益を生む一つのエンジンになります。


小型株への投資リターンが大型株の投資リターンと近年はイーブンであるとの統計報告がありますが、全体でみるとそうであっても(実際に危険だからこそ小型株に転落する銘柄も多いですね)、個々の銘柄で見ると小型であるが故にバリューから見逃された場所であるという立ち位置は今後も変わらないだろうと思っています。


また、大型銘柄ではたとえ強い業績不振にあっても何十人ものアナリスト、ヘッジファンドが張り付いてその動向を予測し続けています。例えばGEやエクソン・モービルが強い業績不振に陥っても、市場の注目度はとても高いです。こういった競争の中にあってアナリストの目を出し抜くのは至難の技です。


しかし米国の小型銘柄、仮に私がウォッチしている銘柄の例を挙げるとジェネスコ(GCO:米国の地方のアパレル小売)に関してウォッチしているアナリストは少ないでしょう。この小売店の保有している資産の取得時簿価と実際の現在の価値、保有する系列子会社株に隠れた保有資産など、ここまで把握している人数はどれくらい存在するでしょうか? 1-2人しかウォッチしていない、或いは誰も見ていない銘柄であればそれだけ、見逃し事項も多くなるだろうと思います。


余談ですが私が思う米国株の問題点は、日本の証券会社がこういった小型銘柄の取り扱いが少なく、思うように投資が出来ないことにあります。「これだ!」と思うような銘柄を見つけても半分以上が本邦の証券会社で取り扱いが無く、購入出来ないのです。


私がやや集中的なポートフォリオを組んでいるのは、ここに原因の一つがあります。


ちなみに、シケモク投資を行う場合はマネックス証券が本邦の証券会社では最も取り扱い銘柄数が多く便利ですので(手数料が他の証券会社、例えばSBI証券に比べ、やや上がりますが他に選択肢が無いので仕方ありません)、シケモク投資をお考えの方にはイチオシです。


見晴らしの悪い米国株が良い理由


一般的に誰もが思う安心の、見晴らしの良い銘柄(例えばGoogle, タバコ銘柄各社など)は皆が保有したがるものでしょう。Googleで誰もが検索を行い広告事業を寡占する未来、またタバコ銘柄がその依存性によって高い利益率を得続ける未来を予想するのは実に簡単です。


ですが、こういった銘柄の問題は全ての人が同じことを考えることで、その価格がときに天まで届くほど高く跳ね上がることにあります。


早い時期に(=悪材料で満ちていた時に)こういった銘柄を購入できていれば良いのですが、取り残された者はこういった銘柄を仰ぎ見るばかりです。


またウォール街の特性として、晴れ渡った青空の素晴らしい見通しの銘柄には、素晴らしいプレミアムが付くという特性があります。


逆に暗雲とときに稲妻がきらめくような見通しには逆プレミアムとでもいうべき、過剰な安値が付く性質があります。


こういったことを踏まえ、低PER・低PBR・高配当などバリューへのアプローチが長期的にグロース銘柄のリターンを大きく上回り続けているのは統計学的に明らかな事実です。


ですが、理論的にそうであっても人が前述の "見晴らしの良い" 銘柄を購入し続けたい = 安心感を得たいというのは恐らくヒトの本能に根差す問題なのでしょう。それは猛獣に襲われた原始の時代には大きなメリットを我々に与えてくれていたと思いますが、株式投資ではその限りではないと思います。そしてこれこそがシケモク投資を誰も行わない理由です。


そして投資を行うのがAIになったとしても、これは改善されないのだろうと思います。何故なら、結局は様々なAI戦略のファンドから投資先を選ぶのは人であり、またAIにプログラムを行うのもまた人という、大きなバイアスがそこに横たわっているからです。


シケモク投資の心構え


さて、こういったことを踏まえた上でシケモク投資を行うに当たっては、この「安い+小型+見晴らしの悪い」という銘柄ならではの、価格がジェットコースターのように上下に変動する、市場のヒステリックな反応へどう向き合うかということが重要です。


次回はこの点を考察していきたいと思います。




スポンサーリンク



スポンサーリンク


0 件のコメント :