エルドラド・ゴールド(EGO)の投資判断(2) 見捨てられた黄金郷





前回は産金セクターの全体的な現況に関してお伝えしてきました。


今回はいよいよエルドラド・ゴールド(EGO)の現状を考えていきましょう。


因みにフォッシルといい、今回といい、こういった小型シケモク株の記事の際は、大変に読者の方が減ってしまいます。個人的な経験として大型株よりこういった名も知れぬ小型株の方が、投資としては余程優れることが多いのですが、ちょっと残念に思うところです(*´з`)


当銘柄は、バフェット言うところのネットネット銘柄に非常に近い類の銘柄に思います。私は個人投資家ならではの妙味を追求できるのはこういった類の銘柄だと思います。


興味を持たれた方、特に投資の初心者の方に是非とも一緒に考えて頂き、パズルを解くようなそのプロセスを楽しんで頂けましたら幸いです。




エルドラド・ゴールド(EGO)


概要


エルドラドはカナダに本社を置くグローバル企業であり、主にカナダ・ギリシア・トルコで探鉱・開発・生産などの業務を行っています。保有する主な鉱山は下記です。



◎トルコ:
Kişladağ(キスラダグ) 金鉱
Efemçukuru(エフェンククル) 金鉱


◎ギリシャ:
Olympias(オリンピア) 金鉱


◎カナダ:
Lamaque(ラマケ) 金鉱


◎その他:
Stratoni(ストラトニ:ギリシャ) 銀・鉛・亜鉛鉱山
Vila Nova(ヴィラ・ノバ:ブラジル) 鉄鉱石鉱山


※注:トルコ語圏アルファベット(セディーユ)の発音は自信が無いです('ω') 上記の読みに間違いがあれば、詳しい方はこっそり教えて下さい。



エルドラドは、カナダ・ギリシア・トルコと分散した鉱山ポートフォリオを保有しているのですが、ここで本銘柄がPBR 0.19(4月購入時)と激安なのには当然ワケがあります。


エルドラドの主力鉱山は最初の4つ、トルコのキスラダグ・エフェンククル、ギリシアのオリンピア、カナダのラマケ鉱山です。


この内、キスラダグは鉱山設備の刷新中であり、その間産出量低下・コスト激増が見込まれ、最近のエルドラドの不振は主にこの鉱山の不調によります。


またオリンピアではギリシア政府と環境対策による訴訟問題になっており、操業継続に関する懸念が存在します。


更にエルドラドは2016年に中国に保有していた金鉱を売却、2017年にインテグラ社(ラマケ鉱山を保有)を買収し、ポートフォリオの改善を図っています。ですがこれに伴うのれん償却費で帳簿の赤字が出現しました。


前回お伝えした金鉱セクター自体のバブル崩壊の状況に加え、これらの悪材料が重なったことで、何と2012年最高値から95%安、上場来最安値の83セント(!?)という悲惨さに至ったワケなのです。


財務諸表


それでは財務諸表を見ていきましょう。


※縦軸の単位は百万ドル。



売上と利益は実に年ごとにバラツキがありますね。


ここでのポイントは (1) 2015年からの売上減少、(2) 2013・2015・2016・2017年の赤字にあります。


年次報告書を各年度で詳しく見た結果を以下にお示ししますが、結論を先に言いますと2016・2017年度に極僅かの赤字があるのみで実はそう悪くない決算なのです。



まず2015年からの売上減は、先述した中国事業の売却が原因です。従って本業不振によるものが主ではありません。


2013年の赤字はのれん償却(- 8.08億ドル)によるものが主であり、実際に資金流出が生じた訳ではありません。それを除外すると1.55億ドル程の黒字です。2015年度も同じくのれん償却(18.43億ドル)を減じると3.02億ドルの黒字です。


2016年度は先の中国事業売却による非持続的費用(3.39億ドル)を減じると、僅か5百万ドルの赤字に留まります。


そのため赤字は2016年5百万ドル、2017年1千万ドルのみと、売上4億ドルに比し1-2%ほどと極僅かの赤字という決算になります。そして本企業は簿価36億ドルを保有し、その内5億5千万ドルをキャッシュで保有していますので、非常に保守的な財務からすると、現状の赤字であれば近日中の倒産は殆ど無いものと思われます。






配当は出したり出さなかったりと、時によります。こういうシケモクでは配当を無理して続けると財務が圧迫されますので、適時配当を打ち切るスタンスは個人的に好感が持てます。





BPSは漸減傾向です。ですが、年々資産減のペースは和らいできており、更に2017年に入ってからは四半期毎にBPSは横這いないし増加に転じてきているのです。


鉱山ごとの業績


保有する鉱山ごとの業績を見てみます。


※EGO IRより引用。


上図のように、エルドラドの産金コストが2018年度大幅に上昇する見込みであることが、2017年年次報告書で示されています。その不振の主な原因は同社の主力鉱山、トルコのキスラダグ鉱山にあります。


キスラダグ鉱山は2017年170000オンス、Cash operating cost 500$/オンスで生産しています。これは同社の金生産量の60%ほどに及びます。


ですが年次報告書によると、2017年 生産量170000オンス(Cash operating cost 500$/オンス) → 2018年 130000オンス(600-700$/オンス) → 2019年 50000オンス(1100-1200$/オンス)と、キスラダグは先述の鉱山設備の刷新の期間中、2019年にかけて徐々に採算性が増悪する見通しです。


鉱山の主要施設の刷新は2020年までかかる見通しで、先が見渡せない金のコモディティとしての性質も加わり、実に行く先は五里霧中といった感なのです。



またギリシアのオリンピア鉱山は環境規制によるギリシア政府との法廷闘争を抱えています。今月の頭に裁判所から仲裁案についてポジティブな判決が出ましたが、こちらも未だ完全な晴れ間が見えた訳ではないのです。


まとめ


という訳で、現状大きな赤字こそないものの、今後の業績下落がキスラダグ鉱山によって見込まれ、脇を固める他の鉱山もパッとしないため、これによる先行きの悲観がエルドラドの叩き売りを誘った訳です。




こちらはエルドラド(EGO)と、金鉱ETF(GDX)、そして金(GLD)の価格比較です。


2012年の金バブル崩壊以降、若干持ち直してきつつある金そのものよりも金鉱セクターは売られ、金鉱セクターでもエルドラドがより売られていることがお分かり頂けると思います。


では赤字を現状殆ど出さず、なお金価格が安かった2015年さえも実質的な赤字を出さず耐え抜いた同社にとって、当時より更に安い、市場のPBR 0.19倍という評価は適正なのでしょうか?


次回は、グレアムの清算価値に則ったエルドラドの本質的価値、また金鉱の価値を考えるのに重要となる、金の本質的価値も併せて考えていこうと思います。



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1 件のコメント :

天国猫 さんのコメント...