シケモク投資を行うに当たり、シケモク銘柄の知名度の低さから、どうしてもリスキーに思えるこういった銘柄に投資する気になれない、ETFなどに比べ保有するのが不安で仕様が無いとのご相談を今回頂きました。
今回はシケモク投資に当たり必要な、個別株リスクを考察していきたいと思います。
個別株式の投資リスク
株式投資におけるリスクとは何でしょう?
それは第一に値下がりリスクであり、第二に企業の破綻リスクですね。
多くの投資家がETFに投資するのは、市場における災厄と言ってもよい個別企業の破綻リスクを回避するためですし、そして名前の通ったブルーチップ(優良株の意味、例えばKO, PG, XOM etc.)が多くの投資家に好まれるのも、こうした考えに基づく点が大きいと思います。
そのため一般的には、 (1)ブルーチップを、(2)分散し、(3)業績が堅調なとき=値段が上がりつつあるときに順張りで購入することが推奨されています。
これにより確かに破綻リスクは回避可能だと思います。
しかしもう一つのリスク、値下がりリスクは本当に回避出来るのでしょうか?
米国株式の価格を決めるもの
株式の価格を決めるものは、その企業が持つ本質的価値です。
ベンジャミン・グレアムがかつて言ったように、株式は短期的には人気投票として、しかし長期的には本質価値に見合うよう計量器として評価される性質があります。
この性質のため、ITバブル・リーマンショックといった過去のバブルにおいて、歴史的にグロース株がどんな高値を付けたとしても、最終的にはやがてその銘柄の本質価値に基づく価格へいずれ収束することになってきました。
では、この観点から先の値下がりリスクを考えてみましょう。
ブルーチップの問題
米国株式、或いは日本株を始めた初心者の方が自分の知るソニー、アマゾン、グーグル、コカ・コーラなどいわゆる優良銘柄を調べたときに、まず気付く問題があります。
それはPER・PBRといったバリュエーションがあまりに高いということです。
一般に、誰もが思う安心の銘柄にはそれに応じたプレミアムがたっぷり付いているものです。特に高値相場にある現状にあって、こういったブルーチップはPER 30倍・40倍といった高値を付けているのがザラであり、そしてこれが「適正価格」とされています。
さて株式の価値は、その企業から将来的に取り出せるキャッシュの総和にあるとチャーリー・マンガーは定義しました。
そして本質価値の評価において、例えグーグルのような輝かしい未来が期待される大企業、P&Gのような連続増配の堅い実績を持つ大企業であっても、30年後は同じ業績を残しうるかどうか分からないのが市場というものです。
ですから、本質的価値の目算に当たっては精々20年先のキャッシュフローまでを当てにするのが、私は妥当だと思います。
バフェットや、他の著明バリュー投資家においてもその購入水準は大体PER 20倍前後までとなっており、概ね同意見であるものと思います。
つまり皆が思う「安心」の優良銘柄は、誰もが知る業績の安定性を持つということ自体が価格を吊り上げる構造を持っており、購入に当たって高すぎるプレミアムを払っているということになります。
過去の相場でも過分な高値を付けた優良銘柄への投資は、その後のバブル崩壊で非常に高いツケを払わされることになることが過去の歴史ですし、単純に優良銘柄だからと投資を行うことは、その実、大きなリスクを抱え込むことを、ここでは再確認する必要があると思います。
分散投資の問題
次は分散投資の問題です。
ここで一つ質問です。仮にここに50銘柄から成るポートフォリオがあるとします。そしてその構成銘柄の価格が平均的に本質価値の3倍を付けていたとした場合、分散投資は将来どのような結果を生むでしょう?
私が思うに、短期的にはそれぞれの銘柄は、市場の期待や恐怖に晒され一見ランダムな動きを示すでしょう。
ですが長期的に市場の上下動に晒されるにつれ、特にバブル崩壊に晒されるにつれ、それぞれの銘柄は整合性を示し始めるはずです。最終的には、3年・5年・10年と時間がたつごとにキレイにその時価は平均的に1/3に収斂していくでしょうね。
これは先に説明した、本質的価値へと株価が収束する性質に則ったものです。
ここから私が言いたいのは、ポートフォリオを組む際に必要だったのは、高値の銘柄を「分散」することではなく、その人が理解できる数・ジャンルに絞った銘柄を(10-15銘柄位)、適正な価格で「非分散」的に保有するべきだったということです。
そして例えば平均PER 30倍というようなポートフォリオを保有することは、上記と同じ意味・危険性を持つだろうことも、併せてお伝えしておきたいと思います。
私の考え
ウォーレン・バフェットはかつて、「リスクは自分が何をしているか分かっていない時に発生するものだ」と述べました。
私は投資モデルの前提条件を増やし、複雑にすることがリスクを減らすものではないと考えます。
重要なことは評価モデルの精巧さではなく、どれくらい投資対象のビジネスを理解し、その優位性を自身が熟知しているのかということであり、そして自分がよく理解するものに投資するという単純化こそがリスクを低減するものだと思います。
そしてビジネスの優位性を確認した後は、そのビジネスの価格が幾らなのか、購入価格は適正なのかということになりますし、これを総じた思考のプロセスこそがリスクを低減すると考えます。
名の知れないシケモク企業であっても、例えば毎年2ドルを稼ぐ企業が3ドルで売られている場合、しかも単純な製缶業者で、過去10年赤字が無く債務も順当、こういう場合は先のソニーなど名前が知られているだけの大企業よりも明らかに低リスクであり、かつ価値を持ちます。
シンプルなビジネスモデルと、それが現実的に生み出すキャッシュフローと資産という確実な物的証拠を根拠にした投資は、極端な「分散」よりも確実なリスク低減効果を生むものと私は思うのです。
アメリカ株投資とETF
とはいいつつも、やはり個別株投資は恐ろしい... と仰られる方は居られると思いますし、そのお気持ちは分かります。
ですので、次回はその声にお応えして、ETF投資について考えてみることにしましょう。
そして次回はETFの本質的価値の評価、そしてそれを踏まえた購入価格の決定方法という観点から考えてみることにしますね。
それでは、次回、乞うご期待下さい。
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